2023年01月23日 16:00 〜 17:30 10階ホール
「雇用問題研究会」(6) “5%賃上げ春闘”の課題 山田久・日本総合研究所副理事長

会見メモ

雇用・賃金情勢に詳しい日本総合研究所副理事長の山田久さんが登壇し、「賃上げを巡る局面変化と2023年春闘の課題」をテーマに話した。

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

持続的賃上げへ適正な価格転嫁を

藤岡 愛 (時事通信社経済部)

 企業の経営環境は、米中対立など経済安全保障の問題で生産拠点が分散化している上、脱炭素化の取り組みでコストが上がっていくことが見込まれる。雇用問題に詳しい日本総合研究所の山田久副理事長は「良いものであれば適正価格で値段が上がるという経済状況を作らないと日本のブレークスルーはない」との考えを示した。 

 山田氏は、今年の春闘に関する会見で開口一番「今年は感じが少し違っている」と感触を述べた。第二次石油危機以来、約40年ぶりの物価上昇局面で賃上げ期待が高まる中、経営側のスタンスに変化が見えるという。「日本の国際的賃金の低さが認知される中で、人材を本当に確保できるのかという点で経営論的に変わってきている」と話した。 

 春闘については「賃上げ率が官製春闘が始まった2014年以来の最高水準になるかは確認したい」としつつも、「ターニングポイントとして賃金が持続的に上がっていくかどうかに関心がある」と強調。日本の賃金が伸び悩む要因は、長期にわたる物価の低迷に慣れた上、バブル崩壊後に雇用を守るため賃金を下げても仕方がないとの認識が広がったことにあるとの考え。物価と賃金が互いに足を引っ張り合う状況は海外と逆の相関で、日本特有という。 

 今後は持続的な賃上げを目指す中で、仕組みづくりや中小企業での価格転嫁などの取り組みが重要になるとの考えだ。認識を全体で共有するために政労使会議の開催に加え、地域別に賃金と物価を上げていくための協議体、賃金の引き上げ目標を提示する第三者委員会などを組織することを提案している。

 今年は連合が定期昇給を含めた賃上げ目標を「5%程度」に据え、前年の「4%程度」から引き上げるなど、傘下の産業別労働組合側からも高い要求が相次ぐ。物価上昇を超える賃上げを目指すが、山田氏は「マイナスになった実質賃金をプラスに戻せるかというと難しい。円安が進行する可能性もあり、2年程度で戻るような簡単な話ではないだろう」とも話した。 


ゲスト / Guest

  • 山田久 / Hisashi YAMADA

    日本総合研究所副理事長 / Vice chief director, The Japan Research Institute,Limited

研究テーマ:雇用問題研究会

研究会回数:6

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