2022年11月21日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「かかりつけ医を考える」(3) 印南一路・慶應義塾大学教授、一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構副所長兼研究部長

会見メモ

医療政策を専門とする印南一路・慶應義塾大学教授が登壇。

日本の医療提供体制の特徴、歴史を踏まえ、かかりつけ医、かかりつけ医機能のあるべき姿と現実的なアプローチについて話した。

 

司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

かかりつけ医「まずは部分的導入で機能を」

吉田 ありさ (日本経済新聞社編集委員)

 「かかりつけ医を考える」シリーズ3回目は活発な医療政策提言で知られる印南一路・慶應義塾大学教授。表題の「あるべき姿」と合わせて、いま実現可能な「落としどころ=現実解」も示す内容となった。資料がビジュアルで初心者にもわかりやすい。

 まず、日本の現状と英国の家庭医制度の間に日本医師会案と自身の「私案」をピン留めし、それぞれ特徴を説明した。日本の医療の構造的問題として①地域でなく病院完結型のため医療連携が困難②医療と介護を一体提供する体制が不備――など指摘。かかりつけ医の議論は「構造的問題を解決する端緒となる」と評価した。

 そのうえで強制登録・アクセス制限・人頭払いの英国の家庭医の概念は魅力的だが、前提となる医療提供体制が日本と違うため「移植アプローチはうまくいかない」と整理。民間の中小医療機関中心の日本に合う形で始めることが大事と強調した。このため登録は患者の任意、医療機関は「手上げ」と緩める代わり、かかりつけ医は1人指名の線を守るというのが私案だ。

 質疑応答ではさらに率直に踏み込んだ。日本医師会がかかりつけ医制度に反対する理由を聞かれると、私的な推測と断りつつ「患者がたくさん来るほど報酬も増える医療制度できたから、受診が減る政策は怖い」「医師間の競争激化を警戒」「リスクを伴う変革そのものが嫌い」と3つ紹介。3つ目はデジタル化政策でも同じ反対が出ているとの例えには、思わずうなずいた。

 診療報酬については、異なる診療科の医師グループで診療し、診療報酬はかかりつけ医にまとめ払いしてグループ内で分配する方式を提案。患者への情報開示のため広告規制の緩和を求めた。英国の制度と比べ「いきなり大々的に導入しようとするより、部分的によい制度を導入し、機能した方がよい」とのまとめが印象的だった。


ゲスト / Guest

  • 印南一路 / Ichiro INNAMI

    慶應義塾大学教授、一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構副所長兼研究部長

研究テーマ:かかりつけ医を考える

研究会回数:3

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