2019年12月02日 13:00 〜 14:30 10階ホール
著者と語る『見えない戦争 インビジブルウォー』田中均・日本総研国際戦略研究所理事長

会見メモ

田中均氏は『見えない戦争 インビジブルウォー』(中公新書ラクレ 11月8日発売)で、世界各地でのポピュリズムの興隆、トランプ米大統領の一国主義、習近平中国国家主席の強国路線の中、戦火を交えない「見えない戦争」が起きている、と指摘。日本はいかに世界と交渉し、この戦いに臨むべきかを説いている。

司会 播摩卓士 日本記者クラブ企画委員(TBSテレビ)


会見リポート

ウィンウィンの成果作る外交を

神屋 由紀子 (西日本新聞社論説委員)

 東西冷戦の終結から30年になる。世界は対立から協調へ向かうとの当初の期待は外れ、先進国では国内の格差と分断が進み、強権的なポピュリズムが勢いづく。本書ではこうした国際情勢を明快に読み解いた。

 「国際関係を律していた基準が今はほとんどなくなってしまった」。先進国では国内の分断が対外関係を規定する時代になった。自国第一主義で国際合意を次々と破棄するトランプ米大統領の政策運営はその典型だ。

 だが型破りな大統領の出現も所得格差や既成政治に対する不満などがもたらした「結果」であり、米国の今後を「より内向きになり国際的主導権を取らなくなる流れは、誰が大統領になろうと変わらない」と展望した。

 一方、米国と覇権を争う中国については「共産党が自らの正統性である経済成長の維持に躍起になっている」と解説。やがて経済成長が鈍化すれば国民の不満を抑えるために国内を引き締る事態が想定される。香港、台湾情勢や対米関係といった対外的な要素とも複雑に絡み合って先行きが不透明との見方を示した。

 こうした国際情勢の中「日本の果たす役割は大きい」と指摘した。現行体制の中で安全保障上の役割を果たして米国とは立場を主張できる関係を作る一方で、アジア諸国には過去の歴史を踏まえた上で外交によって貢献する姿勢を示し、重層的関係を築く必要性を説いた。

 安倍政権には「統治体制が著しく劣化している」と痛烈に批判し、説明責任やチェック機能の欠如、特に外交官らのプロフェッショナリズムが発揮できる環境の不在を強調した。今夏、日韓双方が官邸主導で繰り広げた展望なき応酬はその代表例だ。外交とは「原理原則を保った上で相手とウィンウィンの成果を作ること」が持論。小泉訪朝をはじめ数多くの外交成果に裏付けられた戦略家の言葉は今こそ立ち返るべき一言だろう。


ゲスト / Guest

  • 田中均 / Hitoshi Tanaka

    日本 / Japan

    日本総合研究所 国際戦略研究所理事長 / Chairman, Institute for International Strategy, The Japan Research Institute, Limited

研究テーマ:『見えない戦争 インビジブルウォー』

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