2019年10月10日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「米中争覇」(6) 台湾総統選と米中対立 松田康博・東京大学教授

会見メモ

来年1月の台湾総統選挙は、再選を目指す民進党の蔡英文氏と国民党の韓国瑜・高雄市長との一騎打ちとなった。

中国、台湾を主な研究対象とする松田康博教授が登壇し、香港情勢や米中対立の影響を踏まえた選挙の行方を展望した。

 

松田教授には『現代台湾の政治経済と中台関係』(晃洋書房2018年 共著)などの著書がある。

 

司会 坂東賢治  日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

「繁栄と自立のジレンマ」

今村 啓一 (NHK解説委員長)

 中国とどう付き合うか、国際社会が頭を悩ませる中、経済的にも地理的にもその最前線に立たされている台湾。松田教授が台湾を読み解くキーワードに挙げたのが「繁栄と自立のジレンマ」だ。企業も個人も「繁栄」を追求するなら中国と付き合い、対中依存を深めざるをえない。ただ政治的な「自立」を維持しようとすれば、中国の反発を買い関係を阻害される。

 来年1月の総統選については、蔡英文総統は昨秋の地方選で与党民進党が歴史的な大敗を喫し一時再選は難しいとみられた。しかし野党国民党候補、韓国瑜高雄市長への支持の伸び悩み等の内部要因に加え、今年1月に習近平国家主席が行った台湾統一に向けて武力行使を排除しないとの強硬発言や香港での抗議活動の高まり等の外部要因をきっかけに、独立路線を掲げる民進党が盛り返し、現時点では蔡総統が優勢と分析。

 松田教授は台湾人のアイデンティティーが大きな転換点にあるとみる。「自らは台湾人だが、中国人ではない」と考える人が増加。経済面でも米中対立の影響で中国に進出している台湾系企業の収益が大幅に悪化。中国政府の台湾や香港への強気な姿勢や米中対立が台湾人の心を中国本土から離反させつつある。

 ただ、アメリカについても「どこまで信じてよいかわからない」のが台湾の本音と指摘。アメリカは台湾を支援しているようにみえるが、台湾政策は中国との交渉のカードの一つで、台湾も「トランプの不確実性」に悩んでいると解説。

 最後に松田教授は「評論家の論理、当事者の論理」と揮毫、「台湾人が外から予想するのとは全く違う論理で動く現実を何回も見た。今後も当事者の論理を救い上げた分析をしたい」と述べた。米中対立の狭間におかれた台湾の人々が「繁栄と自立のジレンマ」の中で実際にどのような道を選択するのか、さらに当事者の声に耳を傾け総統選の行方を注視したい。


ゲスト / Guest

  • 松田康博 / Yasuhiro Matsuda

    日本 / Japan

    東京大学東洋文化研究所教授 / professor, Institute for Advanced Studies on Asia, Tokyo University

研究テーマ:米中争覇

研究会回数:6

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