2019年07月23日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「朝鮮半島の今を知る」(30)  高杉暢也・元韓国富士ゼロックス会長

会見メモ

 元韓国富士ゼロックス会長の高杉暢也氏が登壇。日韓のパートナーシップのあり方や半導体材料の対韓輸出規制の強化に対する受け止めなどについて語った。対韓輸出規制の強化に対しては、あくまでも経済人としての視点とした上で「日本経済にも大きな影響を与えるのではないか」と懸念。今後の日韓関係については「パートナーになれるかどうかのネックは政治外交。民間の草の根活動をやっていくことで政治外交を行う人の気持ちを変えたい」と述べた。

 高杉氏はアジア通貨危機で経営難に陥った韓国富士ゼロックスの再建を命じられ1998年に赴任、2017年までの19年間駐在し、韓国内の日本企業関係者の団体「ソウルジャパンクラブ」の会長も務めた。

 

司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)

 


会見リポート

「健全な日韓関係は世界の『羅針盤』」

青山 修二 (北海道新聞社東京報道センター次長)

 日本による輸出規制の強化を契機に日韓関係が混迷の度を深める中、高杉さんは「経済人として19年間、韓国で生活した経験」に基づき、関係再構築に向けた方策を提言した。

 高杉さんは、対立の一因として韓国独特の国民性を挙げ「『野蛮な日本と文明の韓国』という幻想を持ち、日本には何をしてもいい、という反日ナショナリズムを持っている」などと指摘。1970年に韓国の6.5倍に達していた日本の1人あたりの国民所得が、2017年は1.4倍に縮んだという資料を示した上で、「韓国が日本にクレームをつける背景に、もう日本に負けていないという自負心がある」と分析した。

 ただ、高杉さんは日韓関係を否定的に捉えない。日韓両国については、民主主義や市場経済のシステムを共有する「アジアの二大先進産業国家」と定義。核を放棄しない北朝鮮や「一帯一路」構想を推し進める中国の存在、米中対立の激化など現在の世界情勢を踏まえ、「日韓の健全かつ安定した関係は『海図なき航海を導く羅針盤』だ」と協力の必要性を訴えた。

 輸出規制については、世界のサプライチェーンに影響を与えたり、韓国が日本製に代わる代替品の研究開発を進展させたりすることに懸念を表明。会見の最後では「(日韓を一つの市場として両国関係を考えると)政治家・外交官が加害者、経済人・文化人が被害者だ。政治、外交に頑張ってほしい」と述べ、「日本が加害者、韓国が被害者」という近代の歴史観とは異なる、経済人らしい視点を提供して締めくくった。

 高杉さんは日韓両国が2005年に始めた「日韓交流おまつり」の継続を呼び掛けて、両国の政治家や外交官に出会いの場を提供し、関係改善に寄与してきた。そんな高杉さんの「激励」に両国の政治家、外交官はどう応えるのか。まさに知恵の絞りどころ、努力のしどころだと思う。


ゲスト / Guest

  • 高杉暢也 / Nobuya Takasugi

    元韓国富士ゼロックス会長

研究テーマ:朝鮮半島の今を知る

研究会回数:30

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