2019年06月12日 15:45 〜 17:15 10階ホール
「BREXIT迷走の背景-英議会政治の変質」近藤康史・筑波大学教授

会見メモ

 ブレグジットをめぐる英国政治混乱は、二大政党から多党化への流れが背景にあると指摘した。

 ブレア政権の分権改革で誕生したスコットランドなどの地域議会で地域政党が成長。加えて、欧州議会選挙は、国政選挙の小選挙区制ではなく比例代表制で実施されるためUKIPなど小政党が存在感を示すようになり、多党化が有権者に浸透していった。さらに、保守党、労働党ともEU政策について党内で意見が割れ党の結束力が低下したことも混乱に拍車をかけたと解説した。近藤教授は著書『分解するイギリス』(ちくま新書)で英国政治の変質過程を詳述している。

 司会 土生修一 日本記者クラブ事務局長

『分解するイギリス~民主主義モデルの漂流』(ちくま新書)

筑波大学研究者紹介ページ


会見リポート

党内分裂と多党化で混乱

島崎 淳 (共同通信社外信部担当部長)

 英国と言えば、首相や内閣が優位の安定した議院内閣制で「決められる政治の国」とも思われてきた。その英国で、議会はEU離脱の進路を示せず、自身の方針を通せなかったメイ首相は辞任に追い込まれた。近藤氏はこうした混迷の底流に英議会政治の変化があると指摘する。

 与党保守党が離脱支持、野党労働党が残留支持と明確に分かれているならば簡単だ。だが、政党の枠を超えて強硬離脱派、穏健派、残留派が存在し、党方針に造反する議員が出るなど「政党の一体性」が低下したことが「混乱の基礎」にあるという。

 もう一つの変化は多党化の進展だ。英国は長く「二大政党制」のモデルと言われていたが、実際には多党化が進んできた。5月の欧州議会選で英国ではブレグジット党や自由民主党が保守、労働党を上回る躍進を果たしたことは記憶に新しい。

 ただ、英下院は小選挙区制のため、保守党、労働党は全体の得票率の低下ほどには議席数は減っていない。このため有権者が重視する争点が議会に反映されない「民意の漏れ」が生じたのだという。国民投票では離脱が52%、残留48%という結果だったが、下院全体では残留支持の議員の方が多いという「ねじれ現象」を生んだ。

 ここに至るまで混乱収拾の糸口はなかったのか。近藤氏は保守党と労働党の協議にその可能性があったとみる。確かに、2017年の総選挙で保守党が過半数割れに追い込まれたタイミングこそが、メイ氏が労働党に真剣な協議を呼び掛ける機会だったろう。だが、残念ながら、メイ氏の野党への協議呼び掛けは遅きに失し、二大政党による対決型の議会政治の中で協議は失敗に終わった。

 保守党は今、メイ氏の後任選びの真っただ中だ。新首相が誰になろうが、袋小路に入ったEU離脱問題を解決するため、難局が待ち構えていることは間違いない。


ゲスト / Guest

  • 近藤康史 / Yasushi Kondo

    日本 / Japan

    筑波大学教授 / professor, Tsukuba University

研究テーマ:BREXIT迷走の背景-英議会政治の変質

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