2019年06月13日 14:00 〜 15:30 9階会見場
著者と語る『シンクタンクとは何か』 船橋洋一アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長

会見メモ

元朝日新聞主筆の船橋洋一氏は、東日本大震災後に「福島原発事故独立検証委員会」(民間事故調)を立ち上げ『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書』をまとめたことから、自らシンクタンクを運営するようになった。その経緯や自身がアメリカのシンクタンクで務めた経験をまじえながら、世界のシンクタンクの歴史、現状と課題を語った。シンクタンクの力の本質は「政策起業力」であり、独立した民間シンクタンクが、政府とともに公共をつくりあげていくべきだ、とした。

『シンクタンクとは何か 政策起業力の時代』(中公新書)

アジア・パシフィック・イニシアティブ

 

司会 川村晃司 日本記者クラブ企画委員(テレビ朝日)


会見リポート

21世紀の「グローバル・パワー」を求めて

鈴木 美勝 (専門誌「外交」元編集長)

 二度にわたる大戦、大恐慌―20世紀世界を揺るがした歴史的危機。そして、21世紀の今、世界は<神>の領域をも侵し始めたテクノロジーの激的な進化とポピュリズムの劇的な台頭によって、20世紀とは異次元の地殻変動に曝されている。

 自身もシンクタンクを率いる慧眼のジャーナリスト船橋洋一氏は、一連の危機を乗り切るためのグローバル・パワーの重要性を訴えた。実証的なデータに基づく事象分析と解決策の提示、それを政治的に可能にする「政策起業力」、それらをグローバルに展開できる独立系シンクタンクの必要性を、である。 

 シンクタンクは三つの挑戦を受けている。第一に、トランプ米大統領の出現に象徴される「ポピュリズムと分極化」、第二に、多様化し進化する営利系シンクタンクの台頭。そして第三に、シンクタンク・パワーを情報戦の最大の武器として駆使し始めた中国/ロシア専制国家の対外的な影響力の拡大と浸透。「時代がシンクタンクをつくり、シンクタンクが時代をつくる」。世界は今、大きな分岐点にある。

 翻って日本はどうか。氏は日本を「シンクタンク小国」と一刀両断に切り捨て、日本に最も欠けているのが「独立性」だと強調した。日本最強のシンクタンクと称された「霞が関」にかつての面影はない。そのパワーは「神話」と化した。まずグローバル化・デジタル化の波に対応し切れていない。人材流動化の波をつかまえきれず「空洞化」が進行。加えて何よりも、伝統的な暗黙知の視点に立つ政策立案手法は新たなアイデアと代案の隘路となっている―と。「戦略/統治」両面を併せて考えなければならない時代なのにもかかわらずだ。

 パラダイム転換期にあって、氏の一言一言から危機感が伝わってきたが、シンクタンク機能には政治闘争の側面がつきまとう。それにはピュアな<創造知>と違って、国力や政治文化が反映する。その辺りの所見も聞きたい気がした。


ゲスト / Guest

  • 船橋洋一 / Yoichi Funabashi

    アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長 / chairman, Asia Pacific Initiative

研究テーマ:『シンクタンクとは何か 政策起業力の時代』

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