2018年08月10日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「ウナギの未来と日本」塚本勝巳 海洋生物学者(日本大学教授)

会見メモ

司会 井田徹治・共同通信編集委員


会見リポート

ウナギをめぐる〝アリストテレスの謎〟を解く

 夏はウナギだ。だが、ウナギは高い。舌でなく、耳で味わおう。そう思って、箸ではなく、ペンを握って、席に着く。板長、もとい話者は「うなぎはかせ」塚本勝巳さん。

 「ウナギは大地の“はらわた”から自然発生する」。紀元前4世紀、アリストテレスは著書『動物誌』に、そう記述したという。

 ウナギはいつ・どこで・どうやって卵を産み・どう育つのか、古代ギリシャの知の巨人にも謎だった。

 塚本さんは1973年、ウナギ産卵場調査にオールジャパンで取り組んだ第2次白鳳丸航海に大学院生として参加して以来、アリストテレスの投げ出した、謎解きに取り組んできた。

 調査の進展は、長い停滞期、それに続く突然の飛躍というリズムの繰り返しだったという。

 そして塚本さんは2009年5月22日、ついに天然ウナギ卵の採取に成功する。北緯15度、東経142度付近の西マリアナ海嶺で。人類初の快挙だった。「なんたる幸運!」と塚本さん。撮影した卵の写真は「ちょっとピンぼけでした」。アリストテレスの謎をほとんど解いた瞬間だ。

 「日本のウナギ研究は生態の分野で世界のトップです。後続に30年の水をあけています」

 そう塚本さんは宣言しつつ、さらなる課題をあげた。雄と雌はどのように出会うのか、出会う群れの量、雌雄の比率はどうか――。

 そのためには産卵現場に立ち会う必要がある。ウナギの生態解明を前に、新たに立ちふさがるのは「産卵シーンの壁」という。

 会見はこの後、「ウナギのかば焼きは、生態を理解したうえで、大切に食べてください。今まで食べたのが年に2匹なら、年に1匹にして」などと、実用的な提言もあった。

 いやあ、実に耳においしい、真理探究をめぐる職人技の講話でした。


読売新聞社編集委員  鶴原 徹也

ゲスト / Guest

  • 塚本勝巳 / Katsumi Tsukamoto

    日本 / Japan

    海洋生物学者 / marine biologist

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