2018年06月05日 13:00 〜 14:30 9階会見場
「働き方改革の論点」(2) 同一労働・同一賃金と雇用 今野浩一郎・学習院大学名誉教授

会見メモ

働き方改革の論点 (2)

人事の観点から、同一労働・同一賃金をはじめ賃金体系のあり方、働き方改革について解説、6月1日に示された正規雇用者、非正規雇用者の賃金格差についての最高裁判決についてもコメントした。

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

非正規、活躍できる制度が必要

 「同一労働同一賃金」の法律が通れば、正規・非正規の格差が是正できるはず――という甘い夢を砕かれた会見だった。現実を教えてくれたのは、人事管理の専門家である今野浩一郎・学習院大名誉教授だ。

 「同一労働同一賃金とは、単純に『同じ仕事は同じ賃金』ではない。合理性がある格差は問題ない。この法律だけでは非正規の処遇問題は解決しない」。非正規社員を戦力化し、活躍してもらえるよう、キャリアを積める人事制度に変えることが最も重要な課題だと、今野氏は指摘した。

 今野氏はまず、賃金決定の理論を解説。賃金は、企業内の四つの要素①その人の能力②制約の有無③仕事内容④成果(貢献度)と、企業外の⑤市場原理(地域や職種ごとの相場)の五つで決まる。どの要素を重視するかは国や企業による。

 ①は日本的な措置で、長期雇用の前提で採用した若手社員を、能力の低い育成期は実力より潜在能力で評価する。②は「いつでも・どこでも・何時間でも、異動・転勤・時間外労働が可能かどうか」。制約がない人は賃金を高くする。かつて日本の企業が重視したのは①②だったが、最近は③④に移っているという。

 今野氏はことに②に注目。これまでは会社に都合のいい「無制約社員」を評価してきたが、子育てや介護などで制約のある「制約社員」は正社員でも増えている。「すでに日本で働く人の多数派は制約社員。非正規問題は制約社員問題の一部」とみる。

 再雇用やパートなど多様な働き方の労働者を生かして業績を上げるには、企業は③仕事原則をベースにするしかない。パート社員にもキャリアアップ制度を設けて成功しているスーパーの事例を紹介。副店長や店長にもなれ、仕事の重要度に応じて賃金も上がるという。

 ちょうど直前に、非正規の賃金格差を巡る最高裁判決が出た。合理的な理由がない手当については支払いを命じた。同一労働同一賃金の先取りともみえる。今野氏は「人事制度には課題を残す判決だ。企業は今後、非正規社員を活躍させる仕組みを作るほうが良いということだ」と話す。

 現実には、過去の労使交渉の積み重ねの結果、合理的ではない手当などが残っている企業も多い。「それら不合理な賃金の見直しのきっかけとして、法律を活用することが重要」とも、今野氏は指摘した。法律はできて終わりではなく、そこからが始まりということか。

 ちなみに、最高裁判決のうち再雇用差別が問われた長澤運輸事件については、会場から質問があった。同じ仕事内容なのに、再雇用後は賃金2割減とは不合理ではないか、との指摘だ。今野氏の見解は「仕方がない」。というのも、年功序列に合わせて生涯賃金カーブの山を後ろにわざとずらしているため、定年直前の給与は実際の成果よりも平均で3~4割増しという。定年後に仕事内容のみで支払うなら、上乗せしていた年功給部分はゼロになる。本来なら3~4割減になるはずが、半分はもらえている、ともいえるのだという。


朝日新聞出身  長友 佐波子

ゲスト / Guest

  • 今野浩一郎 / Koichiro Imano

    日本 / Japan

    学習院大学名誉教授 / Honorary Professor, Gakushuin University

研究テーマ:働き方改革の論点

研究会回数:2

前へ 2018年06月 次へ
27
28
29
30
31
2
3
4
8
9
10
13
16
17
20
21
22
23
24
26
28
29
30
ページのTOPへ