2018年05月24日 15:00 〜 16:30 9階会見場
「議論再燃!ベーシックインカム」(2) 日本の社会保障とBI 宮本太郎・中央大学教授

会見メモ

20世紀型生活保障が機能不全に陥る中、生活保障の再構築というテーマで話した。

給付付き税額控除などの導入や多様な就業機会へ向けた包括的支援策を取り入れる必要があると提案した。

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

公的扶助拡大を

滝沢 康弘 (読売新聞社社会保障部)

 働いて保険料を納め、それによって誰もが直面しうるリスクを分かち合う「社会保険」中心の20世紀型の社会保障は、十分に機能しなくなっているという。経済のグローバル化で、前提となる中間層の安定雇用が揺らいだためだ。宮本太郎・中央大教授は、そうした状況において、ベーシック・インカム(BI)のような考え方で社会保障のもう一つの柱の「公的扶助」を拡大していくことで対応できる可能性に言及する。

 長年、BIを研究対象としてきた宮本氏だが、BIには三つの疑問点があるという。①給付額や、導入に伴い廃止する制度の範囲、税水準などの組み合わせで社会の様相が大きく変わる「BI論議の難しさ」を乗り越えられるか②導入できたとして、中間層の負担感の点などから「持続可能性」があるのか③超高齢化・単身世帯化が進み、現金を引き出して使うことができない人も増える。BIだけでは「2040年問題」の解決策にならないのでは――、ということだ。

 そこで、どうするか。今後、日本で雇用が増えていく介護などの分野は賃金水準は低く、さらに、働く上で様々な事情を抱える人も多くなっているので、「まずBI」ではなく、給付付き税額控除や公的な住宅手当など「補完型の所得保障」を「多様な就業・就労機会」と組み合わせることが望ましいと指摘。所得は低くても、補完する保障があれば、「就労・就業の場を中心とした『承認の場』を作れる。幸福の要因は、所得よりも誰かに認められること」と目指す社会の姿も言及した。

 「皆さんがBIを記事にすると、読み手はそれぞれ、胸の中に『夢のBI』を持っているから注目してくれる。でも、これは結構、罪作りだと思う」と宮本氏。疑問点①にも絡むが、BI論議の盛り上がりが議論の混乱を招き、熱を冷ましてしまうかもしれない。そんなBI特有の取り扱いの難しさも、教えていただいた。


ゲスト / Guest

  • 宮本太郎 / Taro Miyamoto

    日本 / Japan

    中央大学教授 / Professor, Chuo University

研究テーマ:議論再燃!ベーシックインカム

研究会回数:2

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