2012年09月21日 14:00 〜 15:30 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災 放射性廃棄物」今田高俊・東京工業大学大学院教授

会見メモ

原発で発生する高レベル放射性廃棄物の処分方法について原子力委員会から審議を依頼された日本学術会議の検討委員会は、9月11日、政策の抜本的な見直しを求める提言を、原子力委員会に提出しました。検討委員会委員長の今田高俊・東京工業大学大学院教授が、提言について話し、記者の質問に答えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 杉尾秀哉(TBSテレビ)

日本学術会議の提言・報告等のホームページ

http://www.scj.go.jp/ja/info/index.html


会見リポート

放射性廃棄物「地層処分」見直しを提言

三島 勇 (読売新聞調査研究本部主任研究員)

使用済み核燃料から出される高レベル放射性廃棄物の処分について、日本学術会議は9月11日、抜本的な見直しを求める回答書を公表した。原子力政策に関わる報告としては異例の歯切れの良さで処分政策の矛盾点を指摘し、原点に戻った合意形成の重要性を強調している。

今田高俊・東京工業大学大学院教授は、回答をまとめた同会議高レベル放射性廃棄物の処分に関する検討会の委員長を務めた。高レベル放射性廃棄物は地下300㍍以深の地層に埋設する「地層処分」となっている。しかし処分地選定が一向に進まないため、原子力委員会が2010年9月、同会議に国民に対する説明や情報提供のあり方について審議を依頼した。

審議依頼は国民を説得する技術的方法だったが、検討会は原子力政策の形成過程にまで踏み込んだ。今田教授は、処分政策は「手続きの転倒」で行き詰まったと指摘する。エネルギーに関する大局的政策があり、エネルギー源に占める原子力発電の割合を決め、その後で処分地を決定するのが民主的な手続きだが、現状は前二段階の広範な社会的合意形成を行う前に処分地の決定過程に入ってしまった。

処分問題は解決できるのか。今田教授は「高レベル放射性廃棄物の暫定保管と総量管理を柱として、政策枠組みを再構築すべきだ」と述べる。暫定保管とは、数十年から数百年保管し、その間に対処方法を検討する猶予期間を設けることで、総量管理とは、廃棄物の総量に国民の関心を向け、それを望ましい水準に保つことだ。

総量管理で廃棄物を抑制し、暫定保管による猶予期間に新しい対処方法について合意形成を積み重ねていく。今田教授は「粘り強い取り組みを覚悟していく必要がある」と強調した。回答は社会的合意形成の具体的方法を指摘していない。ぜひそうした具体論も日本学術会議から発信してほしい。

ゲスト / Guest

  • 今田高俊 / Takatoshi Imada

    日本 / Japan

    東京工業大学大学院教授 / Prof. Tokyo Institute of Technology

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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