2010年11月15日 11:00 〜 12:00 10階ホール
田中伸男 国際エネルギー機関(IEA)事務局長

会見メモ

IEAが発表した「世界エネルギー展望2010」(World Energy Outlook 2010)について、田中伸男IEA事務局長が記者会見し、2035年に向けたエネルギー需給見通しや増大する中国の役割について語った。


会見資料

http://www.jnpc.or.jp/section7/20101115IEA.pdf


田中伸男事務局長は、IEAのデータでは中国が2009年、米国を追い抜き世界最大のエネルギー消費国になったことを明らかにした。2035年までに中国のエネルギー消費量は75%増加が見込まれる。中国の動向が世界のエネルギーの行方を左右することになる。たとえば、乗用車保有台数は現在の4000万台から3億5000万台に急増し、中国の石油需要増大の最大の理由となる。低炭素エネルギーでも中国の役割は大きく、太陽光、風力、原子力、電気・ハイブリッド自動車の分野で2035年までの世界の追加量のうち中国が20%以上のシェアを占める。中国は低炭素エネルギー技術でも世界のリーダーになると予測されている。

世界エネルギー展望2010では、各国で公式に採用されていない政策を含め公約や計画をもとに「新政策シナリオ」を計算し、「現行政策シナリオ」や平均気温上昇を2℃にとどめるため温室効果ガス濃度を450ppm以下で安定させる「450シナリオ」と比較した。その結果、①安い石油価格の時代は終わった②再生可能エネルギーの競争力を高めるには長期的な支援が必要となる③化石燃料への補助金廃止が効果的④気温上昇を2℃以下に抑える目標が達成される可能性は低くなった――などが明らかになった。質疑応答では、CCS(二酸化炭素回収・貯留)実現のために必要な政府の政策介入、米国で新技術が開発されたシェールガスなどについても答えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 篠原昇司(日本経済新聞)

通訳 森岡 幹予 大野 理恵(サイマル・インターナショナル)


国際エネルギー機関のホームページ

http://www.iea.org/


会見リポート

注目点は「中国」と「天然ガス」

今井 伸 (毎日新聞出身)

毎年この時期、パリのIEAは、「世界エネルギー展望」を発表。3年前から事務局長の重責を担う田中さんは、これに合わせ、「展望」解説の行脚を続けてきた。

今年の「展望」の書き出しは「未曾有の不確実性」。平たく言えば、どうなるか分からない。でも、田中さんの話を聞いていて、ポイントは2つだと理解した。「中国」と「天然ガス」である。

中 国のエネルギー消費量は昨年、米国を抜いて世界一になった。それでも1人当たり消費量は先進国の3分の1。13億人が先進国並みに消費すればどうなるか。 自動車保有台数は現在の4千万台が3億5千万台になる。想像するだけで恐ろしい。中国が世界中でエネルギー資源を買いあさる背景がこれだ。まさに「中国の 重要性を強調しすぎることはない」(「展望」)のだ。

しかし、中国を悪者と決めつけるだけでは、地球に未来は来ない。中国には別の顔もあ る。すでに風力発電と太陽光発電で世界を牽引し、主要供給国になっている。電気自動車の開発にも積極的だ。あの経済力と技術力と人口(市場パワー)をうま く使えば、低炭素エネルギーの普及に貢献できるかもしれない。

もう一つのポイントの「天然ガス」。米国発のシェールガス革命で、世界の天 然ガス埋蔵量は数倍に増え、価格も下がった。エネルギーの歴史でも特記すべき一大事件だ。このあたりの事情が日本では正確に知られていないのが残念だ。天 然ガスは、石炭・石油と違って二酸化炭素排出が少ない優等生である。世界中が天然ガスの利用拡大に動き始めた。田中さんは「来年の展望では、天然ガス動向 の章を設け、分析したい」と明かした。

最後に田中さんは、「廉価な石油の時代は終わった」と断言した。温暖化対策の推進は費用がかかる一方、石油輸入額減少という果実を得られる。その果実は、今想像しているものより大きくなりそうだ。


ゲスト / Guest

  • 田中伸男 / Nobuo TANAKA

    日本 / Japan

    国際エネルギー機関(IEA)事務局長 / Executive Director, International Energy Agency(IEA)

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