2012年06月18日 14:00 〜 15:30 10階ホール
研究会「検察審査会制度」 四宮啓・弁護士

会見メモ

政府の司法制度改革推進本部「裁判員制度・刑事検討会」委員などを務めた四宮啓・弁護士が、「『強制起訴』制度と検察審査会制度の課題」について話し、記者の質問に答えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 瀬口晴義(東京新聞)

日本記者クラブのホームページ

http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2012/06/r00024424/


会見リポート

検察審査会 専門家とのずれに意義

坂口 祐一 (日本経済新聞論説委員)

福知山線脱線事故でJR西日本の歴代3社長を、陸山会事件では小沢一郎民主党元代表を刑事被告人にした、検察審査会の強制起訴制度。その意義は認めつつも、権限の大きさに見合わない「密室性」や起訴の二重基準化などに対する批判や疑問の声は強い。法相も見直しが必要との認識を示すなか、制度の生みの親の一人が登場した。


「本日は被告席に座ったようです」で始まった研究会は、大学の講義を聴くような趣。日本では検察が公訴権を独占し、起訴するしないの裁量権も握ってきた。そのような状況のなかで不起訴処分を市民がチェックする検察審査会は、戦後採用された検察権力をコントロールする唯一の制度。民意をより反映させるため、司法改革の一環で起訴議決に強制力が与えられた。こうした制度の流れや理念をていねいに説明していただいた。


課題とされる点に対しても一つ一つ反論を展開した。審査が非公開で、容疑者や弁護人が参加しないことについては「公開の裁判ではないから必要ない」。検察官との起訴基準の違いには「ここにこそ国民参加制度の意味がある。専門家とのずれこそが制度の意義」と力を込めた。


さて小沢裁判はどう評価するのか。「小沢氏は無罪を得て、時間などを失った。検察は得たものはなく、信頼などたくさんのものを失った。そして国民は小沢氏本人の供述を聞くことができ、虚偽の捜査報告書が象徴する検察の危うさをあらためて知った。失ったものはないのでは」。四宮教授はこのように分析してみせた。


制度が持つ高い志への、揺るぎない思いが伝わってくる講演だった。ただ、「大きな被害が出た事故や、不信感を抱きがちな政治とカネの問題で起訴基準を下げただけでは」との個人的疑問は残っている。強制起訴事件の裁判がさらに進む過程で、あらためて見解をうかがいたい。



ゲスト / Guest

  • 四宮啓 / Satoru Shinomiya

    弁護士・国学院大学法科大学院教授 / lawyer

研究テーマ:検察審査会制度

研究会回数:0

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