2024年04月03日 14:30 〜 16:00 10階ホール
「2024 米大統領選」(3) グレン・カール ニューズウィーク日本版コラムニスト/元CIAオペレーションオフィサー

会見メモ

ニューズウィーク日本版コラムニスト・作家で元米中央情報局(CIA)のグレン・カール(Glenn L. Carle)さんが“Trump’s Re-emergence and Russia’s Destabilization of the US”をテーマに話した。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

ロシアの影

川北 省吾 (共同通信社編集委員)

 米共和党の大統領候補となるトランプ氏。11月の大統領選で民主党のバイデン大統領を制す「復権シナリオ」を描く。何度も弾劾、起訴されながら、再浮上したのはなぜか。

 カールさんは米社会の内的要因から、その理由を解き明かす。①白人優位の人種差別主義②対外関与を忌避する孤立主義③反エリートの権威主義的ポピュリズム―だ。

 いずれも歴史、文化に深く根差した米国の底流と言える。そこに訴え掛けるから、草の根の人々と響き合う。「最高の工作(大衆操作)は真実から導かれる」と看破した。

 人物像を理解する上で、外的要因も見逃せない。旧ソ連・ロシアの対米情報工作である。カールさんによると、トランプ氏は1970年代末ごろに工作対象者となった。

 ロシアは2011年ごろから、後にプーチン大統領の補佐官となる「灰色の枢機卿」ウラジスラフ・スルコフ氏の主導で、大々的な国内・対外世論工作に乗り出す。

 米国が自らの失脚を企てていると思い込んだプーチン氏の疑心があったという。米孤立主義を助長し、米欧同盟を引き裂き、米国の分断をあおることが主な目的だった。

 一連の工作にからめ捕られたというのがカールさんの分析だ。トランプ氏については以前から「ロシアの資産」との疑惑がくすぶるが、そうした見方とも一致する。

 ただ「資産かどうかは重要ではない」という。「彼は少なくても部分的には対米工作の産物で、ロシア側の目的を体現している。それが現実なのだから」

 もし政権に返り咲けば、孤立主義への傾斜は避けられない。強国化路線を進む「習近平の中国」と向き合うアジアにも大きな試練と戒める。

 インテリジェンスを巡る豊富なエピソードを交えながら、演題を超えて縦横に語った。質疑を含め2時間弱。世界と米国、日本の行方を考えさせられる貴重な会見だった。


ゲスト / Guest

  • グレン・カール / Glenn L. Carle

    ニューズウィーク日本版コラムニスト/元CIAオペレーションオフィサー / Newsweek Japan Columnist/Former CIA Operations Officer

研究テーマ:2024 米大統領選

研究会回数:3

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