2012年01月20日 13:30 〜 14:30 10階ホール
マルズキ・ダルスマン 国連北朝鮮人権問題担当特別報告者 記者会見

会見メモ

来日した北朝鮮の人権状況に関するダルズマン国連特別報告者が記者会見し、訪日調査を終えた声明を発表し、北朝鮮の指導者交代や今後の展開などの質問に答えた。

声明のテキスト(国連広報センターのサイト)

http://unic.or.jp/unic/press_release/2547/

ダルズマン氏は、北朝鮮の指導者交代について「新しい指導層に対し、人権に関するすべての疑問と懸念に応え、外国人の拉致問題をただちに解決するよう呼びかける」と述べ、北朝鮮がダルズマン氏の訪問を受け入れ、接触を始めるよう求めた。

最近、中朝国境の警備が強化され、食糧不足が深刻化していることをあげ、新指導部が政策を変えるよう国際社会が圧力をかける重要性を指摘した。国境管理の強化は北朝鮮だけの一方的な決定ではなく、中国との二国間協議の結果だと述べた。中国が北朝鮮への影響力を活用するよううながし、北朝鮮の人権状況の改善を図るために中国の役割が大きいことを強調した。

また、北朝鮮の急速な崩壊シナリオは現実的ではなく、中長期的な観点から取り組むべきであり、レジーム・チェンジがなくても政策変更はありうる、との期待を示した。


司会 山岡邦彦(日本記者クラブ企画委員・読売新聞)

通訳 池田 薫(サイマル・インターナショナル)

2011年1月28日来日時の日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2011/01/r00021505/


会見リポート

拉致問題の緊急性は明らか

松本 安二 (共同通信外信部)

3月の国連人権理事会に提出する北朝鮮の人権状況に関する報告書の調査のため、昨年1月に続き再び来日。玄葉光一郎外相や拉致被害者家族らと面会したほか、新潟市や柏崎市にも足を運び拉致現場を視察した。


冒頭に読み上げた声明では、今回の調査でとりわけ日本人拉致問題を重視したと強調。拉致被害者や家族が高齢になりつつあり「問題の緊急性は明らかだ」と指摘し、粘り強く北朝鮮に圧力を加え続けることの重要性を訴えた。


北朝鮮では昨年末、金正日総書記が急死、金正恩氏を中心とする新体制への移行が進むが、指導部の変化が人権状況にどのような影響を与えるかを判断するのは「時期尚早」としつつ、新指導部がこれまでの姿勢を転換し国際社会への関与を広げることに期待を寄せた。


今後の北朝鮮の動きについては「金日成主席の生誕記念日など通年の祝賀行事を利用して体制の安定化を図っていくだろう」と展望。急速な体制崩壊は現実的な見方ではないとして「中長期的な観点で問題解決に取り組むべきだ」と主張した。


差し迫った危機として食糧不足の深刻さについても言及。「北朝鮮には国として国民を養っていく十分な能力がない。年内にもまた大きな食糧危機が起きかねない」。新体制でも軍事優先の「先軍政治」が継承されたことで、食糧支援が軍に優先的に配当されることに懸念を示した。


母国インドネシアで国会議員や検事総長を務めた著名な法律家で、議員時代には訪朝経験もある。しかし2010年8月の就任以来、再三にわたる訪朝要請は一度も応じられていない。「まずは現地に入って問題を前進させるための最善策についていろいろ考えたい」。新体制となった北朝鮮に近く改めて会談を打診し、入国許可を求める方針だ。



ゲスト / Guest

  • マルズキ・ダルスマン / Marzuki Darusman

    国連 / UN

    国連北朝鮮人権問題担当特別報告者 / United Nations, Special Rapporteur on the Situation of the Human Rights in the DPRK

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