2024年03月26日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「<政治とカネ>を問う」(7) 磯崎典世・学習院大学教授

会見メモ

かつては日本以上の「金権選挙」とも言われた韓国の選挙は2000年代以降、大きく変化した。2004年の政治資金法改正のみならず、政党事務や政治資金事務の管理も業務とする選挙管理委員会によるところが大きいとされる。

規制が進んだ歴史的な背景、日本への示唆などについて、磯崎典世・学習院大学教授が話した。

 

司会 澤田克己 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

韓国は規制と選管の権限強化で対処

貝瀬 秋彦 (朝日新聞社論説委員)

 日本の政界を揺るがし続ける「政治とカネ」。この問題に、お隣の韓国はどう取り組んできたのか。

 磯崎教授によると、韓国もかつてはいわゆる「どぶ板」でお金をばらまく選挙だったが、いまは様子がすっかり変わったという。ポイントになったのは、独立性の高い選挙管理委員会の権限拡大だった。

 韓国の選管は現在、公職の選挙管理に加え、政党内の選挙事務も委託があれば管理。政治資金の事務管理や選挙関連法の立法建議、選挙違反の取り締まりなど幅広い権限を持つ。

 韓国で政党政治がまともにされるようになったのは、1987年の民主化以降だ。そこから競争が激しくなり、金権政治も横行。これに対処するため、2000年代に入って規制や選管の権限の強化が相次いでなされたという。

 カネのかかる選挙の温床になるとして選挙区の政党支部が廃止され、集会での募金や法人・団体からの献金も禁止された。

 政治家たちはなぜ、自分たちの首を絞めるような制度の改正を認めたのか。政党間競争が激しくなり、金権政治などの「政治腐敗」への目も厳しくなるなか、身を削ることで支持を訴える「改革競争」が起きたのが背景の一つだと磯崎教授はみる。

 また、政治家個人にとっては、金権選挙での無限の競争は大きな負担だ。競争相手もルールを守るのなら、規制を強化してもらった方が負担が減るという側面もあったという。

 政治資金の規制や選挙管理の強化で、金権選挙からは脱却したように見える。だが、一連の改革で立会演説会も廃止されたことで、選挙がメディアやネット中心の戦いになり、政治活動が社会と遊離した「空中戦」になってしまった側面もあるという。こうした「功罪」も踏まえつつ、日本はどうあるべきかを考えなければいけないというのが、磯崎教授からのメッセージだ。


ゲスト / Guest

  • 磯崎典世 / Noriyo ISOZAKI

    日本 / Japan

    学習院大学教授 / professor, Gakushuin University

研究テーマ:<政治とカネ>を問う

研究会回数:7

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