2024年03月07日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「地方自治のいま」(6) 佐藤孝弘・山形市長

会見メモ

人口が減少する中で、多くの地方自治体では老朽化した橋や道路などの公共インフラの維持が課題になっている。デジタル技術を活用したスマートシティーを推進している山形市の取り組みについて聞いた。

佐藤市長は通産省出身、2015年に39歳で初当選し現在3期目。

 

司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信)


会見リポート

「鍵は都市機能の維持」

坂本 由美子 (山形新聞社東京支社編集部長)

 全国の地方が人口減少に直面する中、持続可能な地域づくりをどう実現していくか、現場目線で述べる。最大のポイントは都市機能の維持だ。人口減少で最も問題なのは、人口規模が小さくなるほど需要・供給双方で行政サービス・都市機能の維持が困難になることだからだ。

 地域活性化には、強み、比較優位を持てる要素を伸ばすことが有効。山形市は、重粒子線がん治療施設など充実した医療資源を生かした健康医療先進都市と、城下町の伝統文化や世界的評価の高い山形国際ドキュメンタリー映画祭、交響楽団がある特性を生かした文化創造都市の2大ビジョンを掲げ、施策展開する。前年と同じ施策でいい時代ではなく、常に改良と挑戦を続けている。

 地域の持続可能性を高める観点では税収の確保も不可欠で、地元中小企業の経営革新・創業支援にも力を入れている。企業の売上増進を目的にした支援センターを2018年に開設し、年千件超の相談対応で新規顧客獲得などの好例を出している。

 道路ネットワークの形成で商圏を拡大し、都市機能を維持することも重要だ。周辺市町村を含めた圏域で活力ある社会経済を維持する連携中枢都市圏構想では、広域炊飯施設の共同運営などに取り組んでいる。道路や橋のインフラの老朽化対策は、不具合が生じる前に対策を打つ予防保全に転換し、3割の費用縮減を見込む。地方暮らしの方が東京より家賃などの支出が少なく通勤時間が短いため、自由に使えるお金、時間が多いという優位性を若者に伝える努力も求められる。中長期的にはデジタルや自動運転などの新技術活用で居住地に関わりなく、同水準の都市機能・公共サービスを受けられる地域を目指す。国には都市機能の維持に着目した支援の充実を望む。東京一極集中の現状は持続可能性を欠いており、国土構造まで踏み込んだ地方創生の形を構想すべきだ。


ゲスト / Guest

  • 佐藤孝弘 / Takahiro SATO

    山形市長 / Mayor of Yamagata city

研究テーマ:地方自治のいま

研究会回数:6

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