2024年03月15日 15:45 〜 16:45 10階ホール
「働く人材クライシス」(5) 竹増貞信・ローソン代表取締役社長

会見メモ

ローソンでは2024年問題への対応というだけでなく、物流部門の二酸化炭素(CO2)排出量削減に向け、配送の効率化に取り組んできた。配送頻度や配送パターンを見直すとともに、他社とも協業。第一弾として飲食チェーンの「ワタミ」と工場からトラックで商品を配送する業務で連携した。

「これまで物流は競争力の源泉だったが、非競争領域としてともに回すことも必要。社会全体として効率的な配送をし、CO2を減らしていく」

 

司会 今井純子 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 


会見リポート

利益の適正配分で店舗維持

小野田 徹史 (読売新聞社経済部長)

 暮らしに身近なコンビニエンスストアは、今や小売業を代表する業態に成長した。24時間・365日の営業スタイルは、店舗に社会インフラとしての自覚を促す。消費者に親しまれているだけに、その経営は移ろいやすいニーズへの即応が迫られ、社会的な課題をいち早く克服していくことも求められる。

 ローソンの竹増貞信社長は、いっとき業界で問題化したコンビニ本部と加盟店の軋轢を重くみて、本部が加盟店の利益に責任を持つ経営を2020年度から実践している。「しっかりと加盟店さんにも利益を取っていただく仕組みが欠けていたから、満足な雇用ができず、店の運営が難しくなっているのではないか」。そう語る竹増氏の問題意識からは、企業利益の確保と持続的な経営の均衡を図ることの難しさがうかがえた。

 コロナ禍で顧客の嗜好が変化したことを踏まえ、ローソンは冷凍食品や総菜を開発して品ぞろえを改め、さらにはIT技術を駆使して店舗から最短15分で顧客に商品を届けるサービスも始めるという。アジア諸国で展開する店舗も含めて「必要不可欠なプラットフォーム(基盤)、アジアのGAFAになろうじゃないか」という竹増氏の構えは野心的に映った。

 IT技術を取り込むことを一つの狙いとして、ローソンは親会社の三菱商事とともにKDDIと資本業務提携を結んだ。ローソンは三菱商事とKDDIの折半出資となり、上場は廃止される方向だ。加盟店利益に責任を持つ経営を株主2社が尊重しつづけるかどうかが興味深い。

 物流の担い手不足への対応としては、弁当や麺類、総菜、サンドイッチといった商品の配送を1日3回から2回に減らし、1拠点あたりのCO2(二酸化炭素)排出量を25%削減する効果を見込む。こうした取り組みを経営トップが発信していくことが求められる時代なのだろう。


ゲスト / Guest

  • 竹増貞信 / Sadanobu TAKEMASU

    ローソン代表取締役社長 / President and CEO Representative Director Chairman of the Board, Lawson, Inc.

研究テーマ:働く人材クライシス

研究会回数:5

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