2016年11月29日 15:30 〜 16:30 10階ホール
グランディ 国連難民高等弁務官 会見

会見メモ

今年1月に就任以来、2度目の当クラブでの会見。今回の来日では日本政府に難民受け入れ拡大を要請したが、「日本は難民に慣れておらず、受け入れ拡大には時間がかかりそうだ」と述べた。シリア情勢は「政治的解決しかないが楽観できる状況ではない」。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
通訳 賀来華子


会見リポート

シリア情勢は深刻 日本の難民受け入れ拡大には時間がかかる

土生 修一 (日本記者クラブ専務理事)

フィリッポ・グランディ氏は、今年1月、次期国連事務総長に決まったアントニオ・グテレス氏の後任として国連難民高等弁務官に就任した。今年3月に続き、2度目の日本記者クラブでの会見となった。

 

「1年間で2度の来日は、UNHCRにとって日本が重要である証拠です」

 

今回の来日は、人道支援、難民支援で一層の貢献を日本政府に要請するのが主な目的。特に難民受け入れ拡大について金田法務大臣との会談で取り上げたという。

 

「日本の難民再定住はまだ規模も小さく、受け入れる難民の国籍も限定されている。もっと難民受け入れを拡大してほしいと法務大臣にお願いした」

 

しかし、ハードルは高かったようだ。会談の感想として、グランディ氏は、「個人的見解だが、日本は国民の同質性が高く難民受け入れに慣れていないので、受け入れ拡大にはまず社会全体の心構えが必要だと思う。拡大には時間がかかりそうで、辛抱強くやっていきたい」と述べた。

 

またシリア情勢については、「シリア情勢は日に日に厳しくなっている。すでに500万人が国外に逃れ、600~700万が国内で避難民になっている。最近、シリアから新たな難民は出ていないが、これは国境を閉鎖しているため。その分、国内避難民が多数出ているが、シリア国内に救助の手を差し伸べることは難しい」と厳しい現状を指摘した。

 

「シリア問題は、軍事的ではなく政治的解決しかない。それには政府を含む紛争の全ての当事者が妥協することが必要になる。しかし、シリア当局は、あくまでも軍事的に対応している。さらに国連安保理もシリア問題では大きく分断されており、残念ながら楽観できる状況ではない」と語った。

 

ミャンマーの少数民族をめぐる情勢については、「全体的に東側国境地帯は改善がみられる。最近、数十年ぶりにタイに逃れていた約70人の少数民族の難民がミャンマー本国への自主的帰還を果たした。この地域での政府の努力は評価できる。しかし、西側国境地帯ではイスラム少数民族をめぐり政府軍の攻勢があり、UNHCRとしては、政府に対し、武力行使を抑制し全ての住民の権利を尊重するように呼びかけている。また隣国のバングラデシュ政府に対し、ミャンマーから一時的に逃れてくる住民のために国境を開放してほしいと依頼している」と述べた。

 

次期国連事務総長に決まった前任者のグテレス氏については、「10年間、グテレス氏と一緒に仕事をした経験から言うと、彼は人道支援への意欲と高い政治的スキルをもった人物である。国連でも彼は強いリーダーになれると思う」と期待感を表明した。


ゲスト / Guest

  • フィリッポ・グランディ / Filippo Grandi

    国連難民高等弁務官 / United Nations High Commissioner for Refugees

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