2016年11月21日 13:30 〜 15:00 10階ホール
山口泰 元日銀副総裁 「<日銀検証>を検証する」④

会見メモ

「金利低下も実体経済の刺激効果なし」「継続的円安は金融政策だけでは無理」「マイナス金利政策は判断ミス。深刻な危機でもないのに常識外の措置を突然実施した」「『2%実現』にこだわり副作用の大きな政策をやるのは見直すべき」。厳しい評価が続いた。
司会 実哲也 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

物価2%の呪縛と副作用に強い懸念

実 哲也 (企画委員 日本経済新聞社論説副委員長)

この国の行く末は大丈夫か――。「〈日銀検証〉を検証する」シリーズの4回目に登場した山口泰・日銀元副総裁の会見からは金融政策のテクニカルな問題を超えた「憂国」の念のようなものも伝わってきた。物価上昇率2%目標の達成のためには何でもするという道を日銀が走り続ければ、財政規律や金融システムなどに多大な悪影響が及ぶのではないかという懸念だ。

 

日銀の量的・質的金融緩和政策(QQE)の中心には、マネタリーベースを思い切って拡大すれば物価は上昇するという「理論」があった。だが、物価がゼロ程度にとどまっている実際の動きは、この考え方の「無意味さを雄弁に物語っている」と指摘。にもかかわらず、この点をしっかり検証しないまま、日銀が「マネタリーベースの長期的な増加にコミットすることが重要」と結論づけている点に疑念を示した。

 

マイナス金利についても「判断ミスとの印象を持つ」としたうえで国民の不評や金融システムへの影響を考えれば、深掘りの程度は非常に限られていると語った。日銀が9月に新たに導入した、10年物国債の金利をゼロ%程度に誘導する「イールドカーブ・コントロール」措置については、この枠組みで金融緩和を強化できるかと言えば「実際は難しい」とした。

 

膨大な量の国債を買い続ける一方、市場機能の喪失につながりかねない長期金利の操作にまで踏み切った「黒田日銀」。今後どうすればいいのか。山口氏は、2%目標をとにかく達成させるということではなく、幅広く経済全体のパフォーマンスを実力相応のところに持っていき、持続させることに重きを置くべきだと説く。副作用が大きい措置を安易にとらないようクギを刺すと同時に、緩和政策からの「出口」を探る際などに起こりうるリスクについてできるだけ早く議論を深めるべきだと強調した。


ゲスト / Guest

  • 山口泰 / Yutaka Yamaguchi

    日本 / Japan

    元日銀副総裁 / Former Vice Governor of Bank of Japan

研究テーマ:<日銀検証>を検証する

研究会回数:4

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