2016年11月01日 14:00 〜 15:30 10階ホール
ユッカ・シウコサーリ 新フィンランド駐日大使を囲む会

会見メモ

安保政策、EU、ロシア・東欧などを担当した後、駐アルゼンチン大使を務めたベテラン外交官。9月に駐日大使として着任した。ロシア関係やEUの行方、高齢化・人口減少問題など、北欧の国の視点から幅広く語った。会見に先立ち、同国名物のシナモンロールなどのお菓子が大使館から提供された。
司会 脇祐三 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)

通訳 長井鞠子(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

ロシアとの間合い、高齢化対応は共通の課題

脇 祐三 (企画委員 日本経済新聞社コラムニスト)

着任から2カ月の感想は、母国と日本に共通する課題が多いことだという。北欧の国の近年の変化と今を幅広く語った会見で、欧州連合(EU)の行方と並んで焦点になったのは、隣接するロシアとの外交の間合いの取り方、急速に進む社会の高齢化への対応だった。

 

大使は「ロシアは国際関係を地政学のゼロサムゲームと考えている」と指摘し、「国際法違反を許容することはできない。対ロ経済制裁を全面的に支持する」と、まず強調した。そのうえで、ロシアと対話を続ける重要性も繰り返し説いた。中立国フィンランドで、北大西洋条約機構(NATO)加盟の議論が起きている。ただし、世論調査では大多数がNATO加盟に賛成していない。だから、「今は追求しないが、国民の考えが変われば、そうなれるよう、選択肢も保つ」。安全保障環境の変化の微妙さを伝える説明だ。

 

高齢化と人口減少の問題は、労働市場の変化とからめて語った。終身雇用の形態や、労使による賃金の中央交渉の伝統が崩れてきたのに、労働組合はこの変化に対応できていない。外国からの労働力移入が不可欠なのに、大規模な移民受け入れの経験が乏しい国民の反応は複雑だ……。大使の語る現状説明は、日本の状況とも重なり合って聞こえた。

 

英国がEUから離脱する影響はどうか?

 

フィンランドでも今年夏、EU加盟国であることの是非を問う国民投票を求める声が出たが、主要政党はこうした要求を取り上げなかったという。「EUにマイナスの要素はあるとしても、総じてプラスのほうが多いというのが国民の多数意見」と大使は説明した。日本企業に投資を呼びかけるのが、駐日大使の役割。自国の政治が反EUに傾く懸念を打ち消すことが、他のEU諸国の大使の重要な仕事になっているのだろう。


ゲスト / Guest

  • ユッカ・シウコサーリ / Jukka SIUKOSAARI

    フィンランド / Finland

    駐日大使 / Ambassador

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