2016年09月23日 14:00 〜 15:00 10階ホール
「国連と日本人」⑫ 国連の中の日本人 根本かおる 国連広報センター所長

会見メモ

国連広報センターの根本かおる所長が国連で働く日本人について話し、記者の質問に答えた。
司会 土生修一 日本記者クラブ事務局長


会見リポート

国連は安保理に課題あるが、規範作りやPKOでは成果

土生 修一 (日本記者クラブ専務理事)

日本の国連加盟60周年にあたり、日本記者クラブでは、「国連と日本人」シリーズとして、国連機関で働くさまざまな日本人職員を招き、話を聞いている。12回目のゲストは、国連広報センター(渋谷区、国連大学内)の根本かおる所長だ。

 

根本さんは東大法学部卒業後、テレビ朝日に入社、アナウンサー、記者として活躍したあと、テレビ局を休職してコロンビア大学大学院に留学。留学中に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のインターンを経験したことなどから、1996年にテレビ朝日を退社してUNHCR職員に転身した。

 

以降、UNHCRのトルコ、ブルンジ、コソボ、ネパールの各事務所やジュネーブ本部などで難民支援活動に従事する一方、国連世界食糧計画(WFP)日本事務所の広報官や国連UNHCR協会事務局長も歴任した。

 

2011年にフリージャーナリストとして取材現場に戻り、難民に関する著書を3冊上梓し、2013年8月から国連広報センター(UNIC)所長として、再び国連に戻った。

 

ニューヨークの国連本部に世界各国首脳が集まる「ハイレベル・ウィーク」と呼ばれる連総会演説の週に、今年は、難民・移民に関する国連サミットが行われ、保護対策の強化をうたう「ニューヨーク宣言」が採択された。難民問題に長年関わってきた根本さんは、「難民問題がハイレベル・ウィークのメーンテーマになるとは、隔世の感がある。それだけ、難民問題が世界的な政治問題になってきた」と指摘した。

 

「国連総会は、規範作りの場として機能している。世界中からリーダーが集まるので、新たなコミットメントを引き出すことができる」と意義を強調した。

 

ただ、国連の現状には問題点も多い。ちょうどヤフーがネット上で「国連は存在意義があるか」とのアンケートを実施中で、中間結果では「存在意義なし」が3分の2となり、「意義なし」の理由としては、「常任理事国の身勝手による安保理の機能不全」、「第2次大戦の戦勝国が牛耳っている」などが挙げられていた。

 

根本さんは、「シリアなどの内戦対応では、安保理常任理事国が当事者になっている地域紛争は力と力とがぶつかり合い、なかなか対応が困難になっている」と問題点を認めた。しかし、「戦勝国の組織」との批判には、「加盟国の4分の3が創設当初ではなく、その後に加盟した国。敵国条項に対する不満も国連関係者から聞いたことがない。過去の亡霊にとらわれている批判」と反論した。

 

「国連はimperfect(不完全)だが indispensable(不可欠)な組織」だとした明石康・元国連事務次長の発言を引用して、「キューバ危機の時も米ソは国連の場で交渉した。WFPで米国と北朝鮮が会っていたこともある。地域紛争解決への国連の関与には課題もあるが、これまで第3次世界大戦が起きていないのは、国連が歯止めの役割を果たしてきたため」と国連の意義を強調した。

 

また日本における国連の否定的評価は、「国連安保理の機能不全を強調した報道が目立つ一方で、紛争地域における国連平和維持活動の成果などがあまり報道されないことも影響しているのでは」と語った。

 

国連事務局の日本人職員は81人。供出金などから算出された「望ましい職員数の下限」は186人で、日本の職員数は「下限」の半分以下。ちなみに、「旧敵国」であるドイツ、イタリアは130人台となっている。

 

国連関係機関まで広げると日本人職員は約800人。このうち女性が60%を占める。さらに、紛争地帯などでの国連平和活動関係に従事する日本人職員の80%は女性だという。「日本では、女性の方が失うものが少ないので、大胆になれるのかも。もっと日本の若者たちに来てほしい」と訴えた。「日本人職員には関西人が多い。国連の世界は不条理。嫌なことを笑い飛ばす関西的なバイタリティーが必要なのかもしれない」と分析した。

 

また1990年代は、明石康、緒方貞子の両氏が日本人2トップとして国連を舞台に活躍し、日本のメディアも大きく報じ、「ああいう道があるんだ」と日本の若者の志望者が増えたという。

 

質疑応答では、こんなやり取りがあった。

 

国連職員になるには、何をすればよいか。「留学は有益です。日本以外の場所で外国語を使ってチャンチャンバラバラをやる経験は貴重。若い時に日本を出て世界に身をさらしてほしい」

 

国連の広報担当者として心がけていることは。「暗く語ってもだれも聞いてくれない。オプティミスティックに組織を語れる資質が必要だと思います」


ゲスト / Guest

  • 根本かおる / Kaoru Nemoto

    日本 / Japan

    国連広報センター所長 / Director, the United Nations Information Centre in Tokyo

研究テーマ:国連と日本人

研究会回数:12

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