2016年08月26日 10:00 〜 11:00 9階会見場
シムシェキ トルコ副首相

会見メモ

トルコのシムシェキ副首相が会見し、記者の質問に答えた。
司会 脇祐三 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)
通訳 ウリケル大使顧問


会見リポート

プロパガンダの繰り返しではない 実務家の誠実さも示す

脇 祐三 (企画委員 日本経済新聞社コラムニスト)

トルコはクーデター未遂と、その後の粛清で揺れている。エルドアン大統領の強権的な姿勢への国際的な懸念も強い。国内の貯蓄が不足し、巨額の経常赤字が続く国で、経済浮沈のカギを握るのは外国からの投資だ。経済担当副首相の来日の目的は、日本の企業や投資家にトルコの最新の情勢を理解してもらうことだという。

 

会見ではクルド問題が重要テーマになり、副首相はまず非合法組織クルド労働者党(PKK)によるテロと、それを明確に非難しない国会のクルド系野党を批判した。そのうえで自身もクルド系であることを認め、エルドアン政権が問題解決に努力してきたと力説しつつ、「完璧によくなったと言っているわけではない」とも付け加えた。

 

最近のトルコ軍によるシリア越境攻撃については、国境地帯から過激派「イスラム国」(IS)を排除する目的と同時に、「シリアの一体性を確保し、PKK組織の一部による勢力拡大を阻止する」という表現で、シリア国内のクルド人組織の支配地域拡大を阻む別の目的も認めた。

 

経済情勢では、通貨価値下落の影響で、1人当たり国民所得2万ドル突破といった目標達成の「ハードルが高くなった」と客観的に語った。だからこそ、柔軟な労働法制の導入など構造改革を進めているという。

 

欧州連合(EU)の基準に合わせて廃止した死刑の復活を求める国内の動きについては、国会の議題になっていないと指摘し、「トルコとEUは相互依存関係にあり、EUを取るか、死刑を取るかという選択肢はない」と強調した。

 

大統領の独裁色が強まる中で、テクノクラートはどこまで物が言えるのか。副首相は大統領の発するプロパガンダを単純に繰り返したわけではない。慎重に表現を考えながら、できるだけ自分の言葉で語ろうとしていた。その点が司会者にとって興味深い会見だった。


ゲスト / Guest

  • メフメト・シムシェキ / Mehmet Şimşek

    トルコ / Turkey

    副首相 / Deputy Prime Minister

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