2016年06月17日 17:00 〜 18:00 10階ホール
柳興洙 駐日韓国大使

会見メモ

柳興洙韓国大使が現在の日韓関係について話し、記者の質問に答えた。
司会 伊藤芳明 日本記者クラブ理事長(毎日新聞)/山本勇二 企画委員(東京新聞)


会見リポート

慰安婦合意、これからが重要

阪堂 博之 (共同通信社編集委員)

日韓国交正常化50周年の昨年、最大のハイライトは12月28日に成立した慰安婦問題をめぐる日韓合意だろう。合意を導いた「立役者」である78歳の外交官の離任会見は当然ながら、ご当人の弁も質疑も、ここに集中した。

 

日韓関係が「国交正常化以来最悪」とまで言われた2014年8月、朴槿恵大統領による突然の抜擢で「非常な緊張と負担感を持って」着任した柳興洙大使。日韓合意という見えないゴールに向かって走り続けた1年10カ月を流暢な日本語で振り返った。

 

国会議員交流の再開、6月の韓国外相来日と50周年記念日レセプション、11月の日韓首脳会談、そして年末の合意―。交渉の表も裏も知り尽くした当事者ならではの回顧談が続いた。

 

「両国関係改善に向けて前向きの道筋がつくられた」「慰安婦問題がこういう形で解決できたのは本当によかった」と声を強めながら「これからの履行が最も重要」と顔を引き締めた。「(日本が10億円を拠出する際に)日本でどんな世論が起きるか心配だ。少女像撤去を条件にしたりすると韓国世論の説得が難しくなる。今は静かに耐えていくことが一番大事。韓国政府が関連団体と協議する雰囲気をつくってほしい」

 

幼い頃に日本へ来て小学校5年まで京都で育ち、京大留学を含めて日本滞在は3回目。「両国がどんなに近くて密接か、あらためて確信した。関係が深い国だからこそ問題が生じるのは避けられない。だが問題が起きた時、それを乗り越えよう、解決しようとする努力、精神、姿勢が互いになくてはならない」。自ら高いハードルを乗り越えた人の言葉は重い。

 

帰国後は「個人的に両国関係発展のために努力したい。もう1人の駐韓日本大使のような気持ちで」と笑わせ「日本について正しいことを知らない韓国人に勇気を持って論戦しながら、間違っていることは間違っていると話したい」と決意を語った。

 

1987年以降、日本語で会見した駐日韓国大使は5人目という。しかし、ここまで言い切った大使はいなかったろう。


ゲスト / Guest

  • 柳興洙 / Yoo Heung-soo

    韓国 / Korea

    駐日大使 / Ambassador to Japan

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