2016年05月20日 10:00 〜 11:15 10階ホール
ヘンドリクス 独環境相

会見メモ

G7環境大臣会合のため来日したヘンドリクス独環境相が会見し、記者の質問に答えた。
司会 ヴィーラント・ワーグナー 日本記者クラブ企画委員(独シュピーゲル誌)
通訳 石川桂子(ドイツ大使館)


会見リポート

望ましいエネルギー政策とは

三好 範英 (読売新聞社編集委員)

富山で開かれた先進7か国(G7)環境相会合(5月1516日)に出席のために初来日。ほぼ1週間にわたる滞在で、東京で丸川珠代・環境相と会談を行ったほか、19日には東京電力福島第1原子力発電所の視察も行った。

 

「長期エネルギー需給見通し」(2015年)で、2030年の電源構成で2022%の原発発電を見込む日本と、福島第1原発事故をきっかけに、2022年までの脱原発を法制化したドイツ。日独は何かにつけてよく比較されるが、エネルギー政策に関しては、両国は対照的ともいえる道を歩む。質疑応答が両国の原発の現状やエネルギー政策に集中したのは、自然なことだっただろう。

 

ヘンドリクス氏は、「原発に賛成か反対かは日本の主権に属する」と前置きしながらも、「現在、再生可能エネルギーという、安全面でもコスト面でももっとよい別の選択がある」として、自然条件に恵まれた日本には、再生可能エネルギーの可能性がドイツよりもあるとの認識を示した。今回の訪問には経済ミッションも同行しており、「日独は世界で最も高い技術革新力のある国。日本との共同声明で、とりわけ地球温暖化対策の技術で協力していくことを打ち出した」と述べて、技術開発や普及の分野での日独協力も呼びかけた。

 

ドイツの現状についてヘンドリクス氏は、よりよい電力需給調整システムや蓄電技術の必要性について言及した上で、「2022年までに全ての稼働中の原発を確かに廃棄できる」と述べた。ただ、ドイツでは、再生エネルギー買い取り制度のしわ寄せで、家庭の電気料金は2000年当時の2倍に上昇し、今年も値上げが予想されている。安定した電力供給を実現するためには、ドイツ北部の風力発電の電気を、南部に運ぶ高圧送電線建設が不可欠だが、反対運動などのために遅れている。

 

ヘンドリクス氏はまた、地球温暖化対策の新たな国際的枠組み「パリ協定」(2015年)順守のため、現在ドイツの総発電量の42%を占める褐炭、石炭発電の割合を減らす方針も強調した。しかし、ドイツでは余剰の再生可能エネルギーが電力卸売り市場に流れ込むことで電力価格が暴落し、電力会社がコスト的に見合う褐炭発電所への依存を簡単には断ち切れない現実もある。

 

先進的な産業立国という類似した条件にある日独にとって、安全、安定、そして安価な電力供給を可能とし、かつ地球温暖化にも配慮したエネルギー政策はどうあるべきなのか。両国とも模索が続くだろう。


ゲスト / Guest

  • バーバラ・ヘンドリクス / Barbara Hendricks

    ドイツ / Germany

    環境・自然保護・建設・原子力安全相 / Minister at Environment, Nature Conservation, Building and Nuclear Safety

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