2016年05月09日 14:00 〜 15:00 10階ホール
「チェンジ・メーカーズに聞く」⑤広瀬道明 東京ガス社長

会見メモ

電力・ガスの小売り自由化への対応などについて広瀬道明社長が話し、記者の質問に答えた。


会見リポート

自由化を機に再編に挑む

水野 裕司 (企画委員 日本経済新聞社論説副委員長)

今年4月から電力小売りが全面的に自由化された。新たに参入した電力会社(新電力)のなかで、顧客獲得数でトップに立っているのが東京ガスだ(5月9日時点で30万600件)。来年4月からは都市ガス小売りの全面自由化も始まる。本格的な競争の時代に入ったエネルギー産業。東ガスの動向に注目が集まる。

 

一見地味にみえるガス業界だが、いくつかの変革期を経てきた様子を広瀬道明社長は説明した。ガス原料は石炭から石油、LNG(液化天然ガス)へと変遷。ガスの利用方法もガス灯による明かりの提供に始まり、冷熱を含む熱供給、熱電併給へと広がった。創立131年目の今年、新たに加わったのが電力販売だ。広瀬氏は「第2の創業」と呼んだ。

 

「自由化と業界再編はセットで進んでいく」。この会見の翌日にも東ガスは、電力小売りでの提携先として埼玉県や群馬県の中堅ガス会社3社を追加すると発表している。業界再編へのスタンスについては「何がトリガーになるか確信をもっている人はいないと思う。いろいろな会社の関係者と懇親、交流を進めていく」と述べた。再編は原料調達など上流部門をめぐっても関心が高いが、踏み込んだ発言が聞かれなかったのは残念だった。

 

熊本地震でもこれまでの震災と同様、被災地域のガス供給の復旧に向け、他地域の各ガス会社が現地へ応援に入った。ガス事業の自由が進んだ場合、こうした業界の協力体制を続けにくくなる心配はないかとの質問が会場からあった。

 

広瀬氏によれば、現在は被災したガス事業者が実費を負担して応援を受けている。ガス事業の「地域独占」制が、相互協力が円滑に進むのを支えているといえる。「一つの地域にいろいろな事業者が出てくるとどうなるか……。悩ましい問題だ。保安面について、もう少し詰めていかななければならない」との回答があった。


ゲスト / Guest

  • 広瀬道明 / Michiaki Hirose

    日本 / Japan

    東京ガス社長 / Representative Director, President of TOKYO GAS

研究テーマ:チェンジ・メーカーズに聞く

研究会回数:5

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