2016年04月22日 15:30 〜 16:30 10階ホール
「国連と日本人」⑦松岡由季 UNISDR駐日事務所代表

会見メモ

国連国際防災戦略事務局(UNISDR)駐日事務所(神戸)の代表を務める松岡さんが会見し、記者の質問に答えた。
司会 小栗泉 日本記者クラブ企画委員(日本テレビ)


会見リポート

国際間で学び合う災害対策を

原田 健男 (山陽放送出身)

UNISDR(国連国際防災戦略事務局)は自然災害による被害・損失の減少、災害リスクの軽減をめざし、災害に強い国やコミュニティーの構築を目的として2000年に設立された国連の新しい組織である。松岡由季さんは神戸市にある駐日事務所の代表だ。自然災害と言っても、地震や火山噴火・台風・津波・熱波・地すべり等分野は多岐にわたる。

 

1992年からの20年間に自然災害による死亡者は130万人に上るが、そのうち75%をアジア太平洋地域が占め地震被害が最も多いという。

 

日本はその地域にあり自然災害が多い国だが、その取り組みにはほかの国々の参考になる事例も多いそうだ。例えば1995年の阪神大震災では古い家屋が密集している地域で多くの木造住宅が倒壊したが、救助された人の90%以上が地域の人々に助け出され、日頃の人々の交流が効果的な「共助」をもたらしたという。また2011年の東日本大震災では、建設・土木会社が自主的に動いて道を通れるようにしたり、食料品の店や生産・流通・運送会社等が独自に食糧を提供するなど多くの民間企業が貢献したが、他の国ではこうした事例はまだ少ないようだ。また、消防団のような組織は他の国々に導入を薦めたいシステムということである。

 

一方で先に発生し、現在も余震が続いている熊本地震で、「地震など予想もしなかった」「備えをしていなかった」と言う被災者が少なくないことが、松岡さんは気にかかるという。熊本地域は過去にも大きな地震があり、実際に活断層が走っているほか、活火山である阿蘇山がある。こうした環境にありながら地震への備えをしていないのは人々の意識不足のみならず、行政サイドからの人々への周知も十分ではなかったのかもしれない。企業誘致に不利になるために積極的に地震への備えを地元自治体が訴えなかったからではという指摘もある。

 

松岡さんはこうした日本の災害への取り組みの中で、進んでいる部分は他の国に取り入れるよう促す一方、取り組みが遅れている分野や地域では、よりスムーズな対策が取れるよう調整役を務めたいという。


ゲスト / Guest

  • 松岡由季 / Yuki Matsuoka

    日本 / Japan

    国連国際防災戦略事務局(UNISDR)駐日事務所代表 / Head / Senior Programme Officer, UNISDR Office in Japan

研究テーマ:国連と日本人

研究会回数:7

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