2016年04月01日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「放送法を考える」討論会浅田次郎 作家、日本ペンクラブ会長/岸博幸 慶応大教授(メディア学、元経産省)/西土彰一郎 成城大教授(憲法) /山田健太 専修大教授(言論法)、日本ペンクラブ常務理事

会見メモ

高市総務相の「電波停止」発言で注目された放送法。放送やジャーナリズムのあり方について4人の識者が議論した。
左から
山田健太 専修大教授、浅田次郎 日本ペンクラブ会長、西土彰一郎 成城大学教授岸博幸 慶応大教授
司会 川村晃司 日本記者クラブ企画委員(テレビ朝日)


会見リポート

放送法第4条は局と視聴者の間の約束

鈴木 嘉一 (読売新聞出身)

「放送局が政治的公平性を欠く報道を繰り返した場合、電波法に基づき電波停止を求める可能性がある」という高市早苗総務相の発言が、波紋を広げている。放送法をめぐる論議が活発化する中、「放送法を考える」と題して4月1日に開催された討論会は時宜にかなっていた。

 

大きなポイントは、政治的公平性や多角的な論点の提示など4点を定めた第4条の「番組編集準則」をどう位置づけるかだ。高市総務相は「法規範性を有する」と解釈し、行政指導や行政処分の根拠としている。

 

経産省出身の岸博幸・慶応大教授(メディア学)は「倫理規範であり、法規範と考えるのはおかしい」と批判した。西土彰一郎・成城大教授(憲法)も「両論併記より、社会の中ですくい上げられない声を拾うのが番組編集準則。制作者はこれを盾に政治の介入を退けられる」と述べた。「法規範」論者は皆無だったので、議論はそれ以上深まらなかった。

 

もっとも、「第4条は、放送局と視聴者との間の約束」という山田健太・専修大教授(言論法)の表現は腑に落ちた。「『停波』発言の背景には、行政の権限拡大と市民のメディア不信がある。メディア戦略にたけた安倍首相がそれを後押ししている」との見方にも説得力があった。

 

作家の浅田次郎・日本ペンクラブ会長は、政治家の「愚民思想」を指摘した。論議は、放送を所管する独立行政委員会の必要性や放送倫理・番組向上機構(BPO)の役割、放送現場の「萎縮や忖度」にも及んだ。

 

第4条については「放送法遵守を求める視聴者の会」が一部の新聞に大きな意見広告を出し、特定の番組を指弾した。唖然とさせられたのは、この賛同者に名を連ねた岸教授が「名前を貸しただけ」と発言したことだ。「BPOの委員にはジャーナリストがいない」という別のパネリストの事実誤認も気になった。


ゲスト / Guest

  • 浅田次郎 作家、日本ペンクラブ会長/岸博幸 慶応大教授(メディア学、元経産省)/西土彰一郎 成城大教授(憲法) /山田健太 専修大教授(言論法)、日本ペンクラブ常務理事

研究テーマ:放送法を考える

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