2016年03月23日 10:15 〜 11:30 10階ホール
フォルカー・カウダー 独与党会派院内総務

会見メモ

ドイツの与党「キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)」会派の院内総務を務めるカウダ-議員が会見し、記者の質問に答えた。マリー=ルイーズ・デット同会派環境政策スポークスパーソンも発言した。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
通訳 田口絵美(ドイツ大使館)


会見リポート

独政界の重鎮が語る テロ、難民、対中問題

三好 範英 (読売新聞社編集委員)

カウダー氏はメルケル・ドイツ首相の側近中の側近、独政界の重鎮だ。今回は6回目の来日。メルケル首相の訪日は3回、訪中は8回と、中国偏重の姿勢を見せる中、日本にとって、知日派カウダー氏の存在は心強い。今回は沖縄を訪問した後、東京で安倍首相と会談した。伊勢志摩サミットを前に、事前の意見交換の意味もあったようだ。

 

欧州は2008年のリーマンショック以来、世界金融危機、ユーロ危機、ウクライナ危機、難民危機と、絶え間なく危機に直面している。折しも記者会会見前日、ブリュッセルで同時テロが発生したことから、テロ対策や難民問題が会見テーマの中心となったことは自然なことだったろう。カウダー氏は、難民に関して、「内戦、迫害を逃れてきた人は止まる権利があるが、単によりよい生活を求めて来た人にはその権利はない」と明言した上で、「ドイツの治安状況は悪化している。(これまで大規模なテロがない)ドイツは幸運なだけ。開かれた社会で自爆テロを完全に阻止することはできない」と厳しい認識を示した。

 

会見では、ロシア、中国への対し方に関しても質疑応答が行われ、カウダー氏は「ロシアの(クリミア併合などの)侵略的な軍事攻勢に対し制裁なしですませるなら、中国にどのようなメッセージを送ることになるだろうか。どの国に対しても、すぐさま、武力による領土問題の解決を認めない、というシグナルを発する必要がある」と、南シナ海などでの中国の強引な海洋進出を念頭に、やや踏み込んだ表現をしたのが注目される。

 

ただその一方で、「アジアは中国だけからなるのではない。日本、インドネシアやその他の国々からもなる。欧州が中国だけ見ているという印象が生まれてはならない」とも述べ、中国偏重のドイツ、欧州の感覚を、はしなくも明らかにした。カウダー氏を軸にいかに日本理解、アジア理解を拡げることができるかが我々にとっての課題なのだろう。


ゲスト / Guest

  • フォルカー・カウダー / Volker Kauder

    ドイツ / Germany

    キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)院内総務 / Leader of the Parliamentarian Group of the CDU/CSU

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