2016年02月09日 14:00 〜 15:00 9階会見場
「現代日本の貧困」⑥ 藤田孝典 NPO法人ほっとプラス代表理事

会見メモ

『下流老人』の著者、藤田孝典氏が、高齢者の貧困について話し、記者の質問に答えた。
司会 軽部謙介 日本記者クラブ企画委員(時事通信)


会見リポート

9割が下流老人に?! 求められる意識改革と社会づくり

澤井 仁 (日本経済新聞社社友、日経BP社参与)

著書の『下流老人』が20万部を超えたという。著者はNPOで実際に生活困窮者の支援を行ってきた経験を持ち、日本での老人の貧困問題を実例と数字を押さえて語っていることが受けたのである。

 

下流老人とは「生活保護基準相当で暮らす高齢者、およびその恐れがある高齢者」と定義している。その下流老人が将来は日本の高齢者の9割にもなると指摘する。現在でも65歳以上の貧困率(所得にすると一人世帯125万円未満の率)は22%で、単身高齢者男性では38.3%、女性では52.3%で、この率は増え続けており、将来的には誰もが貧困になる可能性があるというのである。自分を含め、友人たちの生活環境を考えると、身につまされる話である。

 

下流老人の特徴としては、①収入が少ない、②十分な貯蓄がない、③頼れる人がいない――の3点を挙げる。

 

下流老人の多くが生活保護基準に満たない状態である。生活保護を受けることをためらう人も多く、また多くの人の貯蓄が数百万円しかない。仮に65歳時点で300万円の貯蓄があっても、4年程度で底を突いてしまうという。

 

もうひとつ問題は気楽に相談できる相手がおらず、生活困窮時に外部に助けを求められない状況だという。若者の収入、貯蓄、人間関係などの現状をみていくと、将来の老人の環境は、下流化への一本道のように思われる。

 

生活保護基準に満たない困窮老人が生活保護を受けるようになったとしても、生活保護レベルの暮らしでは現在でもなかなかまともな生活は無理だとし、早期に対策を講じなければならないと警告する。

 

ではどうすべきか。まず、生活保護に対する考えを変えるべきだという。現在では生活保護を受けることを恥ずかしいことと考えて積極的に受けようとはしない人が多い。しかし、福祉制度の一環として、権利意識を持つべきだという。

 

また、生活保護を含め年収125万円程度で生活できるためには、少なくとも住宅の確保と医療に対する補助が欠かせないという。企業の空いている社宅や空き家などを老人向けに利用していくこと、病気になりがちの老人に対して医療費の一部を補助していくことなど、国として下流老人を増やさないようにする社会作りが必要である。


ゲスト / Guest

  • 藤田孝典 / Takanori Fujita

    日本 / Japan

    NPO法人ほっとプラス代表理事 / Representative Director, NPO corporation “Hot Plus”

研究テーマ:現代日本の貧困

研究会回数:6

ページのTOPへ