2015年05月21日 15:00 〜 16:30 9階会見場
著者と語る 尾崎真理子 読売新聞東京本社編集委員 『ひみつの王国 評伝 石井桃子』

会見メモ

尾崎真理子さんが児童文学作家の石井桃子さんを描いて芸術選奨文部科学賞などを受賞した自著について話し、記者の質問に答えた。
司会 会田弘継 日本記者クラブ企画委員長(共同通信)
新潮社書籍紹介ページ


会見リポート

重なり合う「書く者」と「書かれる者」

会田 弘継 (企画委員長 共同通信客員論説委員)

児童文学者石井桃子さん(1907〜2008年)の評伝『ひみつの王国』で昨年度(第65回)の芸術選奨(評論等部門)文科大臣賞を受け、さらに新田次郎賞文学賞も決まった。原稿用紙なら千枚、最後の年譜・索引まで入れると560ページを超える大著だが、一気に読ませる。

 

「ノンフィクションでも、文芸評論でもない、変な本」と謙遜するが、とんでもない。評伝の王道を行く作品だ。2002年の軽井沢での泊まり込みでのインタビューから12年、石井さんの自伝的小説『幻の朱い実』に衝撃を受けたときから数えれば21年に及ぶ、息の長い取材と思索から生まれた。石井さんとの確執も含めた本書誕生の経緯が、尾崎さんの語りでよく分かった。

 

と同時に、編集者・作家として知識社会の中で女性の活躍の場を切り開いていった石井さんの生涯と、82年に最初の女性定期採用記者として読売新聞に入った尾崎さんの文芸記者としての軌跡が、相似に見えた。著者とテーマの強いつながりを感じる。本のタイトルの「ひみつ」について、心理学者・河合隼雄を引いて語った「合理・非合理併せ持つこと」が、尾崎さんの文学観を垣間見せた。


ゲスト / Guest

  • 尾崎真理子 / Mariko Ozaki

    日本 / Japan

    読売新聞東京本社編集委員 / editorial writer, The Yomiuri Shimbun

研究テーマ:著者と語る『ひみつの王国 評伝 石井桃子』(新潮社 2014年6月)

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