2015年02月06日 18:00 〜 19:40 10階ホール
試写会 「ソビブル、1943年10月14日午後4時」

申し込み締め切り

会見リポート

抵抗への思い証言 強制収容所での蜂起

吉田 克二 (朝日新聞出身)

「ユダヤ人は羊のようにおとなしく殺されていったのではない」。ポーランド東部・ソビブルの強制収容所で起きた囚人の蜂起を、このドキュメンタリーは取り上げる。

 

想像力を求める映画である。蜂起から生還した囚人のひとり、イェフダ・レルネルのインタビューが淡々と続き、動きはほとんどない。

 

ソビブルの敷地内にはガチョウが飼われていた。その鳴き声で迫害の叫びをかき消すのだという。証言がここに来ると、急に画面は変わり、ガチョウの群れを映し出す。

 

もちろん当時のものではなく、新たに撮られた映像である。しかし、グエグエと歩き回るガチョウが目と耳にこびりつき、その背後で起きていたことがまざまざと思い浮かんでくる。

 

証言者は16歳でワルシャワのゲットーから連行された。列車が駅に着いて「ソビブル」の地だと知る。収容されたユダヤ人が日々、生と死に分けられていく。同じ結末を迎えるのなら、抵抗しての死を選ぼうと決意を固めていく。

 

脱出を誓った囚人たちは、元将校らを中心に計画を練る。夕方の点呼の前に、親衛隊員の看守を手分けしておびき出し、襲う。点呼に集まった囚人とともに立ち上がる。

 

襲撃の始まりが映画のタイトルとなった。その日その時のことに及ぶと、証言者は涙ぐんだ。蜂起は広がったが、生き逃れた者は100人ほどにすぎない。この体験をカメラの前で語るまでに、50年以上を要した。

 

終章では、ソビブルに収容された20万人のデータが読み上げ続けられる。その一人一人の胸に灯っていた思いがあるはずだ、とクロード・ランズマン監督は訴えかけてくるのである。


ゲスト / Guest

  • 試写会 「ソビブル、1943年10月14日午後4時」

ページのTOPへ