2014年01月29日 15:00 〜 16:30 10階ホール
著者と語る『土壌汚染 フクシマの放射性物質のゆくえ』 中西友子 東大大学院農学生命科学研究科教授

会見メモ

東電福島第一原発事故直後から被災地の放射能汚染の実態を調べている東大大学院農学生命科学研究科の中西友子教授が、土壌や作物、家畜、森林、河川、家畜、海水魚など、それぞれの調査結果について報告した。「放射性物質は、当初は移動が見られたが、時間とともに固着し、ほとんど動きが見られなくなっている」と。

司会 日本記者クラブ企画委員 島田敏男(NHK)


会見リポート

風評被害に負けない 「土壌汚染」正しい管理で農業は可能

島田 敏男 (企画委員 NHK解説主幹)

「汚染」という概念を正確に理解する必要がある。これが中西教授がまとめ役を務める東大農学部チームの発信の柱だ。


カドミウムなどの重金属の場合は水に溶けて拡散し、食物から人間の体内に入って害を及ぼす。しかし放射性物質の場合は土がしっかりと受け止めるため、そこに作物を植えても放射性物質をほとんど吸わない。従って、3・11事故の影響を受けた地域でも、植物を育む土壌を捨て去ることなく、適切な管理で農業を継続することは可能だと指摘した。


事故からまもなく3年。農業県である福島は、いまも風評被害と闘っている。出荷米の全袋検査を行い安全性を確認して市場に出しているが、大消費地の理解はどこまで深まっているのか? 特産のりんごや桃も同様だ。中西教授は「時と共に次第に減っていく放射性物質を土の中で管理しながら、土がもたらす恵みを以前のように享受することはできる。このことを消費者に知ってもらうことが大切だ」と説く。福島の農業再建の道標だろう。


第一原発周辺の立ち入り制限区域まで含めると全ての農地の再生は困難だろう。しかし科学の裏付けによって少しでも再生農地が増えていくことに期待したい。


ゲスト / Guest

  • 中西友子 / Tomoko Nakanishi

    日本 / Japan

    東大大学院農学生命科学研究科教授 / Professor, Graduate School of Agricultural and Life Sciences

研究テーマ:著者と語る『土壌汚染 フクシマの放射性物質のゆくえ』

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