2013年11月05日 16:15 〜 17:15 宴会場(9階)
長井鞠子 通訳 記者会見

会見メモ

1964年の東京五輪の際に学生として通訳を務め、その後98年の長野五輪、2016年および2020年東京五輪招致活動に通訳として参加した長井鞠子さんが、これまでの経験について話した。

司会 日本記者クラブ専務理事 中井良則


会見リポート

チーム日本の「秘密兵器」 舞台裏を語る

下村 満子 (「朝日新聞」出身)

オリンピック招致成功の裏の立役者の1人、同時通訳では日本一の長井鞠子さん。「いつも裏方で、表舞台に出たことのない私が…」と言いながら、ど迫力で裏方から見たブエノスアイレスでの勝利の秘密を語ってくれた。


「今回の特徴は、美人コンテストではなく、不美人ばかりの中で どうやって少しでも美人と錯覚させるかの競争でした」。舞台裏での駆け引きや外交は峻烈を極めたそうだ。イギリス人のコンサルタントから「あなたは単なる通訳ではない。招致チームの1人です」と言われた。「通訳は中立公正に訳すことが務め」と思っていた。が、「嘘の訳はいけないが、例えば、poor, weak, decline, disaster といったネガティブな言葉を使わないこと。poor(日本の弱点)の代わりに、『今後努力する点』といったように」。なるほどと、できる限り招致目的にかなうような通訳をする努力をした。


全員が英語でプレゼンしたのも成功の一因だと感じた。総理、知事、以下全員が、演出家の指示通り身ぶり手ぶり、間の取り方も含め必死で練習した。長井さんも発音の指導をした。4年前の失敗からの学びを糧にさらに4年、8年の積み重ねが今回の結果につながった、というのが長井さんの実感。総理の福島原発の「放射能は完全にブロックされている」という言葉を訳していてどう感じたか、という質問に「あの瞬間は何も感じなかった」。が、帰国していろいろな報道を見聞きし、「感じることはあった」が「良い悪いは別に、総理のあの言葉がかなりの決定打になった、と思う」。


長井さんの同通は、話す人の心まで訳してしまうことで定評がある。長井さんが、日本チームの「秘密兵器」だったことは間違いない。


ゲスト / Guest

  • 長井鞠子 / Mariko Nagai

    日本 / Japan

    通訳 / Interpreter

研究テーマ:オリンピック・パラリンピック関連

研究会回数:0

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