2013年09月18日 14:00 〜 16:00 10階ホール
討論会「限定正社員」

会見メモ

安倍政権が成長戦略の一つとして導入を目指す「限定正社員」制度について以下の3人のパネリストを招き討論会を行った。

①鶴光太郎・慶應義塾大学教授(規制改革会議雇用WG座長として雇用制度改革を提起)

②大内伸哉・神戸大学大学院教授(専門は労働法。雇用問題について著書多数)

③藤田孝典・NPO法人ほっとプラス代表理事(非正規労働者などへの相談や支援に取り組む)

司会 日本記者クラブ企画委員 竹田忠(NHK)


会見リポート

ジョブ型正社員の光と影

水野 裕司 (企画委員 日本経済新聞社論説副委員長)

「限定正社員」とは職務、勤務地が限られていたり、労働時間が短かったりする正社員のことだ。半面、一般の正社員と比べ、雇用保障が緩いとされる。第1部ではまず鶴氏が、なぜ、こうした雇用形態を広げる必要があるのか語ってくれた。


「いまの正社員は『なんでも屋』で専門性が身につかず、転職もしにくい。転勤命令には従わなければならず、長時間労働も強いられる」。そうした正社員の在り方の改革を、限定正社員制度は促すという。


とりわけ大きな意義は、「増え過ぎた非正規社員を正社員に転換」する受け皿になる点だとした。限定正社員は賃金などの処遇や雇用が、非正規社員より安定的になるからだ。


大内氏も、限定正社員によって「基幹的な非正規社員の処遇改善」が見込めると期待を寄せた。一方で、「雇用保障の弱い正社員グループが登場する」懸念もあると指摘。限定正社員は積極的に増やす必要があるというより、「増えていかざるを得ないもの」と、鶴氏とのスタンスの違いもみせた。


雇用保障の弱い限定正社員が広がる場合のリスクを挙げたのは藤田氏だ。「今は職業訓練のメニューが不十分で他の仕事に移るのが難しく、社会保障も脆弱」。雇用契約を打ち切られる場合への備えとして、職業訓練の充実や資格取得の支援が必要だという。その通りだろう。


限定正社員をめぐっては、支店閉鎖などで勤務地が消滅したり、その職種がなくなったりした場合、解雇もやむを得ないことを法律で定めるよう経済界が求めている。こうした解雇ルールをどう考えるかは第2部でも論議になった。


藤田氏は限定正社員を解雇しやすくする立法について、「失業者の問題が広がる」と大きな懸念を表明。大内氏も「解雇されやすくしないことがポイント」との意見だった。


鶴氏も新しい解雇ルールが必要と考えているわけではない。労働組合は限定正社員について、「解雇しやすい正社員を生む」と強く反発しているが、議論がやや混乱している面もあるようだ。限定正社員は企業ごとに導入するか否かを判断し、労使で制度設計すればいいのだろう。


「私はこの職種でプロとして頑張る、といった人にも限定正社員は向いている。そうした働き方が今後は主流になっていかざるを得ない」。大内氏の発言が、この雇用形態の可能性を示しているように思えた。


ゲスト / Guest

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