2013年07月26日 15:00 〜 16:30 10階ホール
研究会「エジプト情勢 これからどうなる」横田貴之・日本大学国際関係学部准教授

会見メモ

横田貴之・日本大学国際関係学部准教授が、「エジプト情勢 これからどうなる―ムスリム同胞団を中心に」と題して、軍事クーデターとムルシー政権崩壊の背景や今後の展望について話した。

司会 日本記者クラブ企画委員 脇祐三(日経新聞)


会見リポート

エジプトの行方 経済がカギに

脇祐三 (企画委員 日本経済新聞コラムニスト)

エジプトで軍がモルシ政権を倒した。ムスリム同胞団はこれに抵抗し、流血の衝突が広がった。政変につながった社会の分裂は、「イスラム主義か世俗主義かではなく、同胞団支持か反同胞団かの対立だ」と鈴木氏は強調した。横田氏は「焦点は経済運営。生活苦への国民の抗議、政権への支持率低下に乗じて軍が動いた」と説いた。


一昨年のムバラク政権崩壊、そして今回と、街頭のデモ拡大を受けて軍が大統領に引導を渡した。選挙に基づく民主化ではない「路上民主主義」(鈴木氏)だ。「制度化された民主主義よりも、ストリート・ポリティクスの方が強いと人々は考える」(横田氏)。


暫定政権は、法律専門家を中心に憲法をつくり、その後に議会と大統領の選挙を実施する行程表を示した。だが、鈴木氏は「行方を楽観できる要素はない」と言い切る。「同胞団の一部が過激化し、暴走するリスクもある」と横田氏は言う。そして、経済状況が好転しないと、国民の不満がまた爆発して政治を揺さぶることになる。


同胞団排除を歓迎するアラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビアなどが、資金繰りの危機が続くエジプトへの援助を約束した。一方で、国際通貨基金(IMF)の融資の前提となる補助金削減などの実行は難しい。「誰が政権に就いても、国民の顔色をうかがい、痛みを伴う構造改革に踏み切れない」(横田氏)ジレンマだ。


米国や欧州連合(EU)は軍の介入と流血拡大に懸念を示しつつも、エジプト向け援助は続ける。「エジプトの破綻回避が、とりあえず重要だから」と横田氏は指摘した。経済的な側面も含めて政治危機の理解を深めることができる研究会だった。


(この会見リポートは7月18日開催の研究会 「エジプト情勢 これからどうなる」① 鈴木恵美・早稲田大学イスラーム地域研究機構主任研究員 (http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/07/r00026026/ )との統合版です)


ゲスト / Guest

  • 横田貴之 / Takayuki Yokota

    日本 / Japan

    日本大学国際関係学部准教授 / Asso. Prof., Nihon University

研究テーマ:研究会「エジプト情勢 これからどうなる」

研究会回数:2

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