2013年07月17日 16:00 〜 17:00 10階ホール
中尾武彦 アジア開発銀行総裁 記者会見

会見メモ

アジア開発銀行(ADB)の中尾武彦総裁が会見し、ADBの概要やアジア経済の状況などについて話した。

2008年のリーマン・ショック後も、欧米と比べれば、アジア全体が比較的高い経済成長を遂げている。この成長は輸出だけでなく、国内の消費に軸足を置いたもので、中国の成長がさらに減速したとしても、高い成長を維持していけるものだ、とした。

中国経済については、成長率の見通しを、今月、ADBは4月から0.5%下げたが、幅の大きいものではない。これまでの成長パターンを投資から、消費主導型へ移していくことができるかどうかがポイントになると思う。このことは中国政府も認識している、と。

司会 日本記者クラブ企画委員 安井孝之(朝日新聞)

アジア開発銀行のウェブサイト

http://www.adb.org/


会見リポート

すでに10カ国訪問 対話楽しむ人柄強みに

吉岡 桂子 (朝日新聞編集委員)

訪問先のモンゴルからADBの本部があるマニラに戻る途中、半日ほど滞在した東京で会見した。日本のアジアでの立ち位置を探り、確認するような発言が続いた。


ADBのトップは1966年の設立以来、9代目となる中尾氏を含めてずっと日本人。日本は米国と並ぶ最大の出資国でもあり、対抗馬が出たこともない。一方で、援助を受けてきた中国が地域最大の経済規模を持つようになり、パワーバランスは確実に変わっている。


「ADBを日本の経済協力の別動隊と言う人もいたが、やはり日本への期待は大きい」「日本はアジアの成長を地域の安定と日本企業のビジネスチャンスと考えて支援してきた」「戦略、政治、軍事の意図はなかった。陰徳を積んできたことへの評価がある」。日本のアジアでの存在感を強調した。


減速する中国経済への見方についても質問が出た。「影の銀行(シャドーバンキング)」に象徴される金融不安の影響を織り込んでも「大失速はない」。前職の財務官時代、中国政府高官と積極的に意見を交わしてきた経験を披露し、不動産開発や投資に頼った成長を変えようとしている政策を評価。その上で「分かっていても、スムーズに移行していけるかどうかが課題」と指摘した。


就任2カ月余りで10カ国を歩いた。8月中旬には中国を訪ね、財政相と会う。総裁訪中の恒例だった首相や副首相との会談は実現しそうにないが、「ADBと中国の関係に問題は感じない」。「中立な国際機関」のトップとして日中の対立の影響を否定したものの、地域の「2大国」の関係の微妙さものぞいた。


会見は予定より30分近く延長された。多様なアジアで、異なる背景を持つ相手との対話を楽しむ人柄は強みになりそうだ。


ゲスト / Guest

  • 中尾武彦 / Takehiko Nakao

    日本 / Japan

    アジア開発銀行総裁 / the President of the Asian Development Bank (ADB)

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