2013年06月14日 15:00 〜 16:30 10階ホール
著者と語る『新大陸主義』 ケント・カルダー ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)エドウィン・O・ライシャワー東アジア研究所所長

会見メモ

著書『新大陸主義21世紀のエネルギーパワーゲーム』を解説し、東アジア情勢や日米関係などについて話した。「新大陸主義」ではユーラシア大陸をひとつの固まりと、とらえるという。大陸ではエネルギーを軸に、経済成長を遂げた中国などエネルギー消費国が、ロシアなどのエネルギー供給大国と密接に結合されているという。日本の外交にとってこのダイナミックな動きにどう向き合うかが大切と語った。

司会 日本記者クラブ委員 杉田弘毅(共同通信社)

通訳 長井鞠子(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

資源小国日本 ユーラシアと一体化で新時代

出石 直 (NHK解説主幹)

カルダー氏は、かつてエドウィン・ライシャワー氏の指導を受けた知日派の研究者のひとりで、現在は師の名前を冠した研究所の所長を務めている。クリントン政権時代には駐日米国大使の特別補佐官として東京に滞在していた。

そのカルダー氏が「30年間の研究の集大成」と位置付ける『新大陸主義』は、エネルギーをキーワードに21世紀の新しい国際秩序を地政学の手法で展望した大著だ。

「今、ユーラシア大陸ほどダイナミックでパワフルな地域はない」とカルダー氏は言う。東西冷戦によって分断されていたユーラシア大陸は、ソビエト連邦の崩壊、中国の近代化、インドの経済成長など6つの「重大局面」によって、劇的な変化を遂げた。その原動力となったのは豊富なエネルギー資源であり、それを可能にしたのが地理的な要因だと、カルダー氏は指摘する。

ロシア、カザフスタン、イラン、サウジアラビアなどユーラシア大陸の中心には豊富なエネルギー資源が集中しており、その周辺には、中国、インド、日本、韓国といった大量消費国が存在している。冷戦の終えんとエネルギー消費国の経済発展に伴って、産出国と消費国の間の政治、経済、人的交流はかつてないほど活発になった。

パイプラインの敷設や高速道路、高圧電線網の整備。中国、ロシア、インドなどの活発な首脳外交とアメリカの影響力の相対的な低下。ユーラシア大陸におけるエネルギーを媒介にした統合と一体化に向けた動きを、筆者は「新大陸主義」と呼び「過去一世代で最も重要な変化」と位置付けている。

ユーラシア大陸の周縁にある資源小国日本は今後、どうユーラシア外交を展開していくべきなのか、日米同盟と新大陸主義は両立するのか。いろいろと疑問がわいてきたところで、残念、時間となってしまった。

ゲスト / Guest

  • ケント・カルダー / Kent E. Calder

    米国 / USA

    ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)エドウィン・O・ライシャワー東アジア研究所所長 / Director, Edwin O. Reischauer Center for East Asian Studies, Johns Hopkins School of Advanced International Study(SAIS)

研究テーマ:著者と語る『新大陸主義』

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