2013年05月17日 10:30 〜 11:30 10階ホール
マウラー 赤十字国際委員会総裁 記者会見

会見メモ

昨年7月の総裁就任後、初来日した、マウラー・赤十字国際委員会(ICRC)総裁が会見し、来日目的などについて話した。日本政府関係者との会談では、第5回アフリカ開発会議を念頭に、アフリカ・サヘル地域での安定、平和、開発分野でのICRCの経験を活かしてほしいと申し入れたことを明らかにした。シリア情勢については、食糧や医療支援活動を増やしているが、紛争拡大のスピードが早すぎて、対応しきれない状況にある、とした。赤十字活動全般に対して、政府、反体制派を問わず、尊重されていないことが活動の阻害要因になっている、とも。

司会 日本記者クラブ企画委員 杉田弘毅(共同通信)

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)

赤十字国際員会のウェブサイト

http://www.jrc.or.jp/ICRC/


会見リポート

複雑な構図で紛争当事者が見えにくい

松尾 圭介 (時事通信外信部)

世界各地の紛争地で、人道支援を続けるのが赤十字国際委員会(ICRC)だ。アンリ・デュナンがイタリア統一戦争中の1859年、悲惨な戦場を見て決意し、1863年に創立した組織で、今年で150年を迎える。紛争当事者のどちらにもくみしない「高度な中立性」が組織の柱。戦争捕虜の保護を追求し培った経験が、1996年にペルーで起きた日本大使公邸占拠事件でも生かされたことは記憶に新しい。

上目遣いで、時折笑みを見せる。穏やかな口調で語るマウラーICRC総裁が「死に直面している人がどれくらいいるか。人数だけで言えばシリアは必ずしも世界最悪ではない」と少し力を込めた。

シリアを上回る多くの住民が今この瞬間も命の危険を感じながら暮らしている国として総裁が挙げたのは、ソマリアとコンゴ(旧ザイール)。さらにサハラ砂漠の南に広がる「サヘル地域」も加えた。

こうしたアフリカの紛争は、アサド派と反アサド派が正面から衝突するシリアと比べると当事者が非常に見えにくい。

コンゴについてマウラー総裁は①北キブ州の反政府勢力「M23(3月23日運動)」②カタンガ州の民兵組織「マイマイ」の2集団が絡む紛争を、大きな枠組みとして例示した。しかし、これに「さまざまなグループが各陣営に支援を提供している」ことが問題で、複雑に絡み合う紛争の構図が事態を見えにくくしている。

しかも最近は「中央アフリカ共和国から武装勢力がコンゴに侵入してきている。これが事態をさらに複雑にしている」と一層ややこしい。

ICRCの現場では地域ごとに当事者を特定しなければ、そもそも「中立」そのものが築けない。難しい時代を迎えているが、それでも活動は今この瞬間も続いている。

ゲスト / Guest

  • ペーター・マウラー / Peter Maurer

    赤十字国際委員会総裁 / The president of the ICRC

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