2013年04月22日 13:00 〜 14:30 宴会場(9階)
「再生可能エネルギー」 デンマーク・ロラン島の 取り組みについて聞く

会見メモ

デンマーク・ロラン市のレオ・クリステンセン市議が、同市が再生可能エネルギー分野で2003年から産官学ですすめる、CTF(コミュニティ・テスティング・ファシリティーズ)の実証例を説明した。

CTFから水素コミュニティや藻を利用したバイオマスなどのプロジェクトをこれまで100ほど手がけてきた。大学との提携が有効なのは、民間と違い、立場がニュートラルでグローバルな視点をもっているためだとして、日本で同様な取り組みが始まった場合は、その点を参考にしてほしい、と述べた。

司会 日本記者クラブ企画委員 脇祐三(日経新聞)

通訳 ニールセン北村朋子

日本記者クラブ 第10回取材団 北欧 フィンランド・デンマーク(1月13日~21日)
参加した記者によるWEBエッセーです


会見リポート

「地域は変われる」ロラン島に学ぶ

金子憲治 (日経BPクリーンテック研究所)

再生可能エネルギー推進派にとって、デンマークは、いわば理想の国。世界的な風力発電普及の先鞭をつけ、国内に風力産業を育てた。さらにデンマークのロラン島(市)は、風力の電気で水素を製造して利用する水素コミュニティーに取り組むことで知られる。
そんな、環境先進地域のロラン市市議会議員のレオ・クリステンセン氏の会見は、意外にも「日本はロラン市の失敗から、多くを学んでほしい」との自戒の言葉で始まった。
なるほど、話を聞くとロラン市は挫折の歴史ともいえる。「1900年代初めに造船工場を誘致して繁栄したが、石油ショックで造船所が閉鎖され、人口流出が始まった。1970年代に原発の候補地になり、反原発運動を通じて、代替エネルギーに力を入れ、この分野での産業誘致に乗り出した」と振り返る。
そのかいあって、風車メーカーの工場が建設され、失業率は2・8%まで下がったが、「その風力設備の工場も2010年に低コストを求めて海外に移転し、再び失業率は8%に上がってしまった」と打ち明ける。「工場誘致など外部に頼った雇用対策は限界があると悟った」という。
水素コミュニティーの建設には、こうした背景がある。「風力発電の電力は不安定で、電気は乗り物の燃料にはならない。水素にすれば電気を貯められるし、燃料にもなる。水素のほか、藻を使った燃料生産にも取り組んでいる。水素は水から製造できるし、藻は太陽エネルギーを使い二酸化炭素を材料に燃料を作る。地域の資源を使って、エネルギーを生み出し、提供することこそ、真の地域の自立」という思いがある。
「ロラン市が日本に教えられる技術はないが、地域は変われるということを知ってほしい」とクリステンセン氏は言う。この果敢な「変化」への挑戦こそが、いま日本が学ぶべき最も重要なことだろう。


ゲスト / Guest

  • レオ・クリステンセン / Leo Christensen

    デンマーク / Denmark.

    ロラン市会議員 / Member of City Council in Lolland Municipality

研究テーマ:「再生可能エネルギー」 デンマーク・ロラン島の 取り組みについて聞く

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