2012年11月29日 10:00 〜 11:00 宴会場(9階)
野口元郎 国際刑事裁判所 次期被害者信託基金理事 記者会見

会見メモ

国際刑事裁判所(ICC、在ハーグ)の付属機関「被害者信託基金(TFV)」の次期理事に選任された、野口元郎・法務総合研究所国際協力部長が、被害者信託基金TFVについて話し、記者の質問に答えた。

質問 日本記者クラブ企画委員 山岡邦彦(読売新聞)

被害者信託基金のページ

http://www.trustfundforvictims.org/


会見リポート

戦争犯罪の被害に寄り添う

井田香奈子 (朝日新聞社会部・前ブリュッセル支局長)

国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)の「被害者信託基金」の理事に11月、選任された。民族対立などを背景とする殺人・略奪・強姦など、ICCが扱う犯罪の被害者の救済を目的とする基金だが、ICC本体の予算と違って各国の拠出は任意。いまのところ欧州の一部の国頼みで、課題は多そうだ。

戦争犯罪や集団殺害について個人の刑事責任を問う国際刑事(軍事)法廷として、第二次大戦後のニュルンベルク、東京裁判、90年代以降に旧ユーゴスラビア、カンボジアなど、さまざまな法廷が設置されてきた。ICCはこのような機能をもつ常設裁判所を、という要請から設立されたが、大きな特徴は、その被害者対策にあるという。

国際刑事法廷は、旧ユーゴ事件でハーグ、ルワンダの事件でアルーシャ(タンザニア)と、発生地とは遠く離れたところに置かれがち。「Justiceというが被害者にはどのくらい重みがあるのか、と問われてきた」と野口さんは話す。

今年7月まで判事を務めたカンボジア特別法廷では被害者への損害賠償命令も出せるしくみになったが、現実には被告人にもカンボジア政府にも資力がなく、限定的な賠償にとどまってしまった。そんな苦い思いが、被害者への損害賠償を確証するICCの基金への意気込みにつながっているのだろう。

今年3月にはICC初の有罪判決がコンゴ事件について出て、確定すれば被害者への損害賠償の手続きは現実のものになる。

基金のもう一つの目的である被害者のリハビリや社会復帰の支援については、ウガンダやコンゴですでに始まっている。会見では現地での活動の様子をビデオで示した。

理事は無報酬。法務省法務総合研究所国際協力部長の職と両立させ、できる限りかかわっていくという。


ゲスト / Guest

  • 野口元郎 / Motoo Noguchi

    日本 / Japan

    国際刑事裁判所 被害者信託基金理事 / The Board of the Directors of the Trust Fund for Victims (TFV) of the International Criminal Court (ICC)

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