2012年10月31日 15:00 〜 16:00 10階ホール
フェアホイゲン 前欧州委員会副委員長 記者会見

会見メモ

フェアホイゲン前欧州委員会副委員長が、欧州の経済問題について話し、記者の質問に答えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 小此木潔(朝日新聞)

通訳 高松珠子


会見リポート

「EUは崩壊しない」と強調

福田 直之 (朝日新聞経済部)

質疑でギリシャがユーロ圏から離脱するとの見方を問われ、「100%却下だ。ギリシャの離脱は国家破綻につながり、世界危機を起こしかねない」と強く反論した。欧州連合(EU)やユーロ圏が崩壊するとの見方にも「どの加盟国も離れたいと思わないし、追い出すこともない」として「事実無根」と強調。ことさら危機をはやし立てるような米英の報道ぶりも批判した。


1999~2004年まではEUの拡大を担当する委員を、その後は10年まで副委員長兼産業・企業を担当する委員を務めた。統合の危機を強く否定するのは、長年加盟国の拡大や市場統一に取り組んできた自負があるからだろう。確かに彼が崩壊説を「政治的なことを理解していない」と言うように、諸国は必ずしも統合による経済効果だけを狙ってEUに加盟したわけではない。


欧州危機の発端はギリシャの経済指標の改ざんだったという見方に否定的だ。より根本的な「欧米の大銀行がとった無責任な行動」に原因を求めたのは、危機の全体像を再度思い起こさせてくれた。確かに「米国の銀行救済に使われたお金より、ギリシャ救済に回るお金の方が少ない」し、「ギリシャ救済と言うが、実質は(ギリシャへの貸手の)独仏の銀行救済パッケージ」なのだ。


ただ、新財政協定と欧州安定メカニズム、欧州中銀の国債買い切りなどをもって「危機を乗り切る手段がそろった」とし、「金融危機は近く、過去のものになるのでは」と述べたのは、楽観的との印象を受けた。加盟国がEUに権限を渡す政治統合については「委譲のための条約の批准に時間がかかる。大きな変化は期待していない」とも述べている。もう二度と危機を起こさないようにするには、各国の財政権限という最も政治的な部分を統合する必要があり、危機の根治には時間がかかりそうだ。



ゲスト / Guest

  • ギュンター・フェアホイゲン / Günter Verheugen

    ドイツ / Germany

    前欧州委員会副委員長 / Former Vice President of the European Commission

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