2012年06月13日 15:00 〜 16:30 10階ホール
研究会「欧州経済」①加藤隆俊 国際金融情報センター理事長

会見メモ

加藤隆俊・国際金融情報センター理事長が、日本記者クラブ主催の研究会「欧州経済」で、欧州経済の今後の行方や日本への影響などについて話し、記者の質問に答えた。


司会 日本記者クラブ企画委員 実哲也(日経新聞)


国際金融情報センターのホームページ

http://www.jcif.or.jp/


会見リポート

分離か統合か 「欧州経済」重大な分岐点

野坂 雅一 (読売新聞論説副委員長)


不動産バブル崩壊で苦境に立つスペインがついに金融支援を仰ぎ、ギリシャ再選挙の直前という緊迫したタイミングに、「欧州経済」研究会のトップバッターで登場した。


財務官や国際通貨基金(IMF)副専務理事を歴任された実績をあらためて紹介するまでもない。しかし、状況を熟知している加藤理事長にしても、欧州の将来を予測しがたいようだ。話をうかがって、なおさら、危機の深刻さを痛感させられた。


「私の申しあげたいことは表紙に尽きている」と最初に示したのが、会場に配布された資料である。エーゲ海を思わせる青空の下に、「分離」と「統合経済圏」がそれぞれ左右に向いた道路標識が描かれていた。


「ユーロ圏17カ国から抜ける国が出てくるのか、統合経済圏へ具体的に歩んでいくかという分岐点にある」。そう説明したうえで、「欧州は統合経済圏の高みを整えていくマスタープランを打ち出すべきだ」と注文を付けたのには同感する。


具体的には、バブル崩壊後の金融不安を克服した日本の教訓にも触れ、「銀行監督・規制などのバンキング・ユニオン(銀行同盟)と、財政統合を強化することが必要だ。財政再建と金融機関の経営不安を一体として手当てすべきだ」と述べた。


ただ、再選挙の結果次第では、ギリシャがユーロ離脱に追い込まれかねない。しかし、「そうなれば、問題はギリシャにとどまらない。次はどこか?というリスクがある」と警告した。スペインの銀行支援についても、「的を得た対応と思うが、市場がどう反応するだろうか」と、まだ楽観は禁物との見立てだった。


メキシコでのG20サミット、欧州首脳会議などの重要日程が続いた。欧州は標識のどちらの方向に歩んでいくのだろうか。欧州経済の浮沈に影響を受ける日本や世界経済にも重大な分岐点だとの思いを強くした。



ゲスト / Guest

  • 加藤隆俊 / Takatoshi Kato

    日本 / Japan

    国際金融情報センター理事長 / President, The Japan Center for International Finance (JCIF)

研究テーマ:欧州経済

研究会回数:0

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