2012年05月22日 15:00 〜 16:30 宴会場(9階)
シリーズ企画「3・11大震災」エネルギー政策 植田和弘・京都大学大学院教授

会見メモ

経産省の有識者会議「調達価格等算定委員会」委員長として、再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り制度の原案などを発表した植田和弘氏が、こんごの日本のエネルギー政策について話し、記者の質問に答えた。


司会 日本記者クラブ企画委員 小此木潔(朝日新聞)


植田和弘教授のホームページ

http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/~ueta/jp/


会見リポート

分散・ネットワーク型へ転機

銀木 晃 (日本経済新聞産業部)

「今回の危機に取り組むことが将来の作り方につながっていく」。東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故で、日本のエネルギー政策は抜本的な見直しを迫られている。「エネルギーコンセプトの再構築が必要」と訴える。


エネルギーコンセプトとは日本が持つべきエネルギー問題に対する基本理念のこと。原子力発電所は1基で100万キロワットといった大出力があるが、福島第一原発の事故を受け、除染費用や安全対策費が膨らんでいる。「原発の電気は安価というのは本当なのか。今後も(再処理などの)費用が増える可能性がある」と指摘する。


一方で太陽光発電などの再生可能エネルギーは技術革新や競争激化でコストが急速に下落。住宅用太陽光で3~4キロワット、メガソーラーでも日本ならまだ数万キロワット程度にすぎないが、小規模でもそれぞれの地域のエネルギー自給率向上に役立つ。天候などで出力はぶれるものの、ネットワーク化などにより出力変動の影響も緩和できる。「大規模集中型の電源の時代から分散・ネットワーク型への転換期」とみる。


エネルギー政策の見直し作業に有識者として関わる機会が多く、多忙を極めるなかでの講演となった。電源構成などを議論する経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会の委員であるだけでなく、大阪府や大阪市のエネルギー戦略を検討する「大阪府市エネルギー戦略会議」の座長でもある。


政府は今夏をめどにエネルギーの中長期戦略を抜本的に見直す方針。化石燃料の資源に限りがあるなど「エネルギーは世代間衡平の問題でもある」。次の世代にどのような社会を残すべきなのか。「脱・原発」や「縮・原発」「原発維持、拡大」など様々な意見に耳を傾け、一人ひとりが真剣に考えるべきテーマだろう。



ゲスト / Guest

  • 植田和弘 / Kazuhiro Ueta

    日本 / Japan

    京都大学大学院教授(環境経済学) / Dean, Professor, Graduate School of Economics Kyoto University

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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