2012年04月25日 15:00 〜 16:30 10階ホール
著者と語る『物語 近現代ギリシャの歴史』 村田奈々子 法政大学講師

会見メモ

『物語 近現代ギリシャの歴史 独立戦争からユーロ危機まで』を執筆した、村田奈々子氏が研究を始めた経緯や近現代ギリシャの歴史について話し、記者の質問に答えた。


司会 日本記者クラブ企画委員 川村晃司(テレビ朝日)


『物語 近現代ギリシャの歴史 独立戦争からユーロ危機まで』の中央公論新社のページ

http://www.chuko.co.jp/shinsho/2012/02/102152.html


会見リポート

しょうもない国 でもギリシャ大好き

大内 佐紀 (読売新聞国際部)

ギリシャ研究に20年余、かかわってきた一つの集大成としてまとめた著書が、「ギリシャが悲惨な状態になったため、注目されたのは悲しいこと」と語る。


著書は、そのタイトルの通り、ギリシャが19世紀初頭の対トルコ独立戦争で独立し、欧州連合(EU)の一員として活動する今に至る約200年間を網羅する。


村田氏は、ギリシャ研究の魅力を「国の歴史とギリシャ人の歴史の両方がある点」と表する。国の歴史がオスマントルコから独立した1830年に始まるのに対し、ギリシャ人の歴史は、国の歴史を「時間的にも、地理的にも凌駕する」という。


学者としては、失礼ながら、遅咲きだ。元はロシア史を学ぶことを志したが、ロシアへ行ったところ「この国ではない」と感じた。その後、ふとしたきっかけで興味を持ったギリシャの地を初めて踏んだのが1989年。ギリシャ語を学ぶため、現地のサマースクールへ行った。


ギリシャといえば、ホメーロスの時代の古代ギリシャのイメージが強かったのが、初訪問で、「今の生きたギリシャ人」とギリシャ現代史にのめりこんだ。ところが、日本の大学には古代ギリシャの文献はあるが、現代ギリシャはさほどではない。日本での研究に限界を感じ、現代ギリシャ研究に定評がある米国の大学院の門を30歳を過ぎてたたき、博士号を取得したのは39歳の時。「そして今は就活中です」と笑う。


「しょうもない国」「明るい先が見えない」と厳しい表現を使いながら、それでもギリシャが大好きなのが熱く伝わる講演会だった。


村田氏は、5月6日のギリシャ総選挙を現地で見守ったという。結果は緊縮策を推進してきた連立与党の過半数割れで、「ますます混乱に陥るだろう」という村田氏の事前予想の通りになった。これからのギリシャの新路を、村田氏は今、どうみるのだろうか。



ゲスト / Guest

  • 村田奈々子 / Nanako Murata

    日本 / Japan

    法政大学講師 / Housei University

研究テーマ:著者と語る『物語 近現代ギリシャの歴史 独立戦争からユーロ危機まで』

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