会見リポート
2012年04月17日
15:00 〜 16:30
10階ホール
研究会「ミャンマー③ 宗教」土佐桂子 東京外語大学大学院教授
会見メモ
「ミャンマーにおける宗教政策と今後の動き」について話した。
司会 日本記者クラブ企画委員 井田由美(日本テレビ)
東京外国語大学の土佐桂子さんのページ
会見リポート
ミャンマー アメとムチの宗教政策
清水 勝彦 (朝日新聞出身)
知識ゼロに近いミャンマー(ビルマ)の宗教について学ぶ貴重な機会を与えられた。
国民の9割近くが仏教徒で、サンガ(僧侶と見習い僧)約54万7000人は、軍人(約40万人)を上回る社会集団だという。現憲法は、仏教を「大多数の国民が信仰する特別に名誉ある宗教」と認定している。
彼らの信仰する上座仏教は戒律を重視し、出家と在家(一般人)の区別が明確だ。僧侶になると「国民登録証」を返納し、選挙権・被選挙権もなくなる。僧侶が罪を犯すと、在家とは別の「サンガ裁判」で裁かれる。
このような宗教状況下で、軍事政権と僧侶の関係はどうだったのか。
ガソリン値上げをきっかけに起きた2007年の反政府デモでは、各地で僧侶が先頭に立った。彼らは地域社会のリーダーであり、庶民の困窮ぶりを肌で受け止めていた。
僧侶たちは抗議の手段として、戒律にある「不受布施」に出た。軍人やその家族からの喜捨を拒んだのだ。「政権にとってはメンツをつぶされ、政権の正統性を揺るがす痛手になった」(土佐教授)という。
僧侶の抗議行動に懲りた政権は、アメとムチの政策で臨んだ。政府要人が喜捨する場面を報道させ、僧侶に称号を乱発して、仏教を守る権力者の正統性をアピールする一方、「政治活動禁止」の布告や指令書を次々と出し、僧侶を牽制した。
中国は昨年末、北京・霊光寺にある仏舎利(ブッダの歯)のミャンマー巡行を行った。民主化で欧米の影響力が増大する現状に楔を打ち込む狙いがあり、ミャンマーの現政権にとっては格好の人気取り策だった。
だが、こうした露骨な宗教の政治利用も、「民衆が一番警戒している国が、軍事政権と親密だった中国」では、どれだけの効果があったのか。
ゲスト / Guest
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土佐桂子 / Keiko Tosa
日本 / Japan
東京外語大学大学院教授 / Professor, Tokyo University of Foreign Studies
研究テーマ:研究会「ミャンマー」
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