2012年03月16日 15:00 〜 16:30 10階ホール
研究会「権力移行期の世界」「ロシア」上野俊彦 上智大学教授(ロシア政治)

会見メモ

司会 会田弘継(日本記者クラブ企画委員 共同通信)


上野俊彦のホームページ

http://www.geocities.jp/collegelife9354/index.html


会見リポート

結局ロシアは官僚帝国?

会田 弘継 (企画委員 共同通信論説委員長兼編集委員室長)

プーチン大統領返り咲きの選挙に国際選挙監視員として派遣されたというだけあって、選挙に絡むエピソードはたっぷり。ロシアという国の本質も垣間見させてくれた。


多数の投票所を回って投票を繰り返す「回転木馬」という不正が行われ、プーチン陣営の一行がバスで投票所を回る映像がユーチューブで出たりした。だが、そんな労力をかけても増やせる票はたかがしれている。選挙委員会自体を巻き込んで投票用紙をすり替えるなどする不正の方が多いだろうというのが、上野教授の推測。


不正選挙騒動は、今回の選挙で取り立てて不正が派手だったというよりは、プーチン強権体制に対する都市部(特に首都モスクワ)の中産階級の不満の表れと見るのが順当なようだ。エネルギー高騰で潤ったロシアは中産階級の厚みを増しており、豊かさの後には自由への希求が来るのは、近代化の必然だ。


豊かになっても、この国は規制緩和などとは縁がないらしい。新規事業を始めようなどと思ったら、役所手続きでうんざりしてしまう。そのあたりに、数と力を増してきた中産階級の不満の原因があるようだ。


「結局は官僚帝国、ロシア帝国以来、根本的にはなにも変わっていません」という上野教授のご託宣。日本もついこの間まで(あるいは今でも)官僚帝国だったのではないか、と思ったが、程度が違う。手続きを早めたかったら「袖の下」というのは、第3世界と同じだ。プーチンにせよ、メドベージェフにせよ、官僚出身なわけだから、帝政時代・ソ連時代を貫いて「官僚天下」がまだ続いていることになる。政党政治などまったく未成熟だというから明治初期の日本みたいなものか。


第2次プーチン政権下での北方領土問題にも触れていただいた。一見動きだしても楽観は禁物だそうだ。



ゲスト / Guest

  • 上野俊彦 / Toshihiko Ueno

    日本 / Japan

    上智大学教授(ロシア政治) / Professor of Sophia University

研究テーマ:シリーズ研究会「権力移行期の世界」

研究会回数:0

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