2011年08月18日 15:00 〜 16:00 宴会場(9階)  
著者と語る 写真集『鬼哭(きこく)の島』 江成常夫  

会見メモ

司会 日本記者クラブ企画委員 坂東賢治(毎日新聞)


写真集『鬼哭の島』 朝日新聞出版のページ

http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=12798


写真展「昭和史のかたち」9月25日まで開催中

東京都写真美術館のホームページ

http://syabi.com/contents/exhibition/index-1382.html


会見リポート

「鬼哭の島」写真が伝えること

伊藤 俊文 (毎日新聞写真部編集委員)

「写真には過去の闇に光を当て、史実を正確に呼び戻す力がある」。終戦記念日を前に写真家・江成常夫さんから毎日新聞の夕刊写真グラフ「eye」に寄せていただいた文章の書き出しだ。


見出しは「沈黙の声に耳傾け」。江成さんはライフワークとして「昭和の十五年戦争」の激戦地を巡り、野ざらしにされた日本兵の遺骨が泣いているのを見てきた。4年前にはインドネシアのビアク、一昨年は硫黄島、そして今年は総集編「鬼哭(きこく)の島」として、ハワイ・パールハーバーから沖縄までを5枚の写真で語っていただいた。


東京都写真美術館で開催中の江成常夫写真展「昭和のかたち」は「満州」から「ヒロシマ」「ナガサキ」まで5部にわたる集大成。今回のクラブでの講演は、太平洋戦争の記録「鬼哭の島」に絞っての内容となった。あるときは静かに、そしてあるときは熱のこもった口調で「昭和の過ち」を対岸に置き、経済を「神話」とし、飽食に走ってきた戦後の日本と日本人に疑問を投げかける。


62年に毎日新聞入社。74年には退社され、フリー写真家として自分のまなざしで対象と向き合ってきた江成さん。日本兵の遺骨に線香を手向け、死と涙を強いられた「沈黙の声」にレンズを向けるとき、罪悪感に襲われるという。個人の資格で死者と向き合うことが許されるのだろうか……と。その言葉に、はっとした。私は新聞社の写真記者として、ごく当たり前のように「報道」の名を借りてカメラを構えてこなかったか。


言葉を持たない人と真摯に向かい合い、心の内を視覚言語化することの大切さを改めて学んだ。先輩諸兄と「中高生など若い人たちにこそ聞いてほしい講演だった」と話した。いかに次世代へとつないでいくか。責任の重さを肩に感じた。


ゲスト / Guest

  • 江成常夫 / Enari TSUNEO

    日本 / Japan

    写真家 / Photographer

研究テーマ:著者と語る『鬼哭(きこく)の島』

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