2011年06月23日 15:00 〜 16:30 宴会場(9階)
研究会「大使に聞く マレーシア」 堀江正彦 前マレーシア大使

会見メモ

堀江大使は、マレーシアの内政、経済状況などを報告後、ナジブ政権のすすめる政治、経済改革について説明した。マレーシアは、マレー系、華人、インド系などの多人種、多宗教、多文化国家である。そこがマレーシアを理解する基本になる。そこから、現政権のかかげるワン・マレーシア(すべての国民に支援と機会を与えるというコンセプト)がうまれてくる。経済については、新経済モデル計画をたちあげ、2020年までに国民1人当たりのGDPを現在の約7200米ドルから15,000から20,000米ドルまでに引き上げ、先進国入りを目指している、と。

日本との関係は以下のような数字をあげ、ゆるぎないものとした。

*日系企業は約1400社(半数は製造業)が進出し、電器・電子製品の生産でマレーシアの輸出に貢献している。在留邦人は約1万人。

*マハティール首相時代の82年にスタートした、「ルックイースト」政策で、マレーシア人累積留学生数は13000人にものぼる。彼らが官民で活躍するようになってきており、日系企業では、日本人幹部と現地労働者との潤滑油の役割を担っている。

*マレーシア社会での日本文化の浸透度を示すものに、毎年恒例の「盆踊り大会」がある。4万人の参加者があり、9割以上が地元の人たちである。

*日本人年金生活者の海外居住先調査で2006年以降、マレーシアが人気ナンバーワンである。物価が安く、少し暑いが安定した気候、多人種であるために国民が国際化していることなどが主な理由にあげられる。この人気は今後も続いていくものと、思う。


司会 日本記者クラブ企画委員 濱本良一(読売新聞)


在マレーシア日本国大使館

http://www.my.emb-japan.go.jp/Japanese/index.htm


会見リポート

経済の安定と発展で大きな変化が

真田 正明 (朝日新聞論説委員)

マハティール元大統領の22年に及ぶ長期政権の印象が強かったマレーシアが、ずいぶん変わってきた。有能な副大統領でありながら排斥されたアンワル氏が野党指導者として復活、2008年の総選挙で野党連合が大躍進したこと。それに経済の安定と発展が大きいようだ。


マハティール氏といえば、ルックイースト(東方)政策とブミプトラ(土地の子)政策で知られる。現在のナジブ首相は、なかでもブミプトラの克服を掲げている。


もともとのマレー人に、英国人が植民地支配のために連れてきたインド人と華人が加わった多民族社会。ブミプトラは経済的に不利なマレー系住民を優遇する政策だった。これを市場の原則にあわせ正常な形に変えていくことは、20年までに先進国への仲間入りを目指すうえで乗り越えなければならない壁だろう。


ナジブ首相は昨年4月に来日し、当時の鳩山首相と会談した。食事の席で堀江大使に自分の政策を、絵を描きながら説明したそうだ。まず土台に第10次マレーシア計画がある。そこに政治変革プログラムと新経済モデルという二つの柱を立てる。その上に、全ての国民に公正にという「ワン・マレーシア」の屋根を載せるのだという。


東方政策は、以前のように何から何まで学ぶというものではなくなった。しかし今でも全国の大学にマレーシア人留学生はいるし、30年近いこの政策によって政治・経済の重要なポストに元日本留学生がいるようになった。


堀江大使の懸案だったマレーシアに国際工科大学をつくるという計画は今年、マレーシア工科大学の中に日本マレーシア国際工科院ができるという形で結実する。日本人年金生活者の滞在先としてトップの人気を誇っていることとあわせ、成熟した2国間関係ができてきたようだ。


ゲスト / Guest

  • 堀江正彦 / Masahiko HORIE

    日本 / Japan

    前マレーシア大使 / former Ambassador of Japan to Malaysia

研究テーマ:大使に聞く マレーシア

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