2011年06月03日 10:30 〜 11:30 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」 被災地 県知事 記者会見  村井嘉浩・宮城県知事

会見メモ

村井嘉浩・宮城県知事が「宮城県の復興・再構築に向けて」と題して記者会見し、宮城県の復興計画について話した。

村井知事は、東日本大震災後の宮城県の復興について、復旧期3年、再生期4年、発展期3年間の計10年間を計画期間とし、9月県議会に震災復興計画を議案として上程する、と説明した。復興のポイントとして10項目をあげ、そのうち、①災害に強いまちづくり宮城モデルの構築②水産県みやぎの復興③ものづくり産業の早期復興による「富県宮城の実現」――の3点について詳しく述べた。津波被害を受けたA町(人口2700人)の場合、高台移転による復興事業費について、総事業費519億円のうち地元負担は388億円にものぼるという試算を紹介し、国の支援が欠かせないことを訴えた。また「水産業復興特区」制度により民間資本が漁業に参入する新たな選択肢を説明した。質疑応答では、菅内閣不信任案、国の復興構想会議、義援金の配分、女川原発、漁業振興などの質問に答えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 篠原昇司(日本経済新聞)


※宮城県に寄せられた義捐金

154,293件 15,215,057,942円(5/25現在)


宮城県のホームページ

http://www.pref.miyagi.jp/


会見リポート

企業参入で漁業に未来を

篠原 昇司 (日本経済新聞夕刊編集長)

被災直後から積極的にメディアに出て、つねに元気に振る舞う村井知事。悲しみや怒りをあまり表に出さない知事の、胸のうちの一端をのぞいてみたいとかねて思っていた。


原案ができたばかりの県復興計画には知事の考えが所々に出てくる。たとえば「復興の主体は民間」「復旧ではなく震災前より発展させる」といったキーワードだ。


漁業では142の漁港を3分の1に集約、「水産業復興特区」を創設したいという。水産県でありながら漁民の高齢化が進み、元通りに復旧しても水産の未来は先細りだ。企業参入の選択肢を示し「若い人にとっても魅力のある漁業にしたい」。既得権者から激しい抗議を受けた構想だが、「おしかりを受けても、ひるまず提言したい」と威勢がいい。


知事は自動車産業の誘致に熱意を示してきた。景気を回復させ、県財政を立て直したいとの思いからだ。だが念願の組み立て工場の稼働直後に震災に襲われた。財政再建は先送りせざるを得ないだろう。


津波で破壊された市街地の再生費用は巨額で、国の支援が遅れれば自治体財政はすぐに干上がる。「A町の場合、土地の造成だけで町の年間予算の6倍以上かかる。そのうえに住宅、病院、学校を建てる資金が必要」。県の復興計画づくりを急ぐのは国の概算要求前に支援論議をリードしたいとの思いがある。復興構想会議の遅々とした議論に苛立つのも無理はない。


「被災者対応で毎日、仕事がどんどん増えているのに…」。永田町の空騒ぎへの感想を聞かれ、ちらりと顔をのぞかせた悲愴の表情。明るく振る舞うその裏に、やはり憤怒と焦燥が堆積しているように思う。


記者会見スタート3分後、小さな地震があった。まもなく収まったが、終始立ったまま熱く語り続けた知事は地震に気がつかなかったようだ。


ゲスト / Guest

  • 村井嘉浩 / Yoshihiro MURAI

    日本 / Japan

    宮城県知事 / Governor, Miyagi Prefectural Government

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」 被災地 県知事 記者会見

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